交響曲第8番ハ短調
クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮クリーヴランド管弦楽団
94/02/06〜07
DECCA 443 753-2

 トータル82分台であるが「堂々とした」「スケールの大きい」という形容はちょっと似合わない気がする。弦に暗さがないため重量感がさほどではないからだ。といって、南独や東独のオケのような金管の鋭さがないため、明るさはあっても歯切れが良いとは感じない。このように際立った特徴のない音色ゆえ、これを「中途半端」と思う人もいれば、「ええ塩梅」と考える人もいるだろう。私は後者である。この曲との相性は決して悪くないと思う。
 私が大抵ケチを付ける第1楽章中間部盛り上がりも加速をしないまま乗り切ってしまう。指揮者の技量を推し量るにはそこだけで十分だ。ただし、第2楽章はもう少し重心が低くても良いのではないかと思った。埋没気味のティンパニのせいだが、前楽章とのバランスを考えたらテンポも速すぎである。トリオで金管が前倒し気味に入ってくるのも気になった。アダージョは再びお見事。セル盤同様の29分台だが、明るい音色に見合ったテンポを設定しているから決してもたれない。さすがだ。終楽章は主題提示部も再現部も躍動感に溢れているのであるが、もっとしんみり演奏してほしい部分をアッサリ流してしまうのが惜しい。また、最後の「ミレド」で「ド」だけ引っ張るのも一貫性がないと聞こえてしまう。それまで速く進めてきたのなら短距離走のように勢いでゴールになだれ込むべきではないか。ここは「中途半端」により減点。ということで、奇数楽章と偶数楽章の評価が大きく分かれることになった。

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