交響曲第9番ニ短調
誰かさんの打ち込み
2008
Hodie Tempus Collection CD 12348
(ただしwmaファイルのダウンロード)

 許光俊がHMV通販の連載エッセイ「言いたい放題」にて「謎の指揮者」として採り上げていたコブラのブル9を遂に聴く機会が訪れた。某掲示板のブル9スレに貼られていたリンク先から全曲ダウンロード(192 Kbpsのwmaファイル)することができたのである。(2ユーロと表記されているのになぜか無料で落とせてしまった。)さっそく試聴を開始した。だが、これはいったい・・・・・・
 出だしのブルックナー開始こそ何とかかんとか弦楽合奏と聞こえたが、直後の「ラー」はオルガンみたいなのでヘンだなあと思っていたら1分40秒以降の電子音オンパレードに呆然。そして絶句。ブルックナーが粗悪なゲーム音楽になっちゃったよ(号泣)。実はシンセサイザーが用いられているという情報は上記スレから得ていたのだが、ここまで酷い代物だとは思っていなかった(心の準備不足)。第1楽章から順に47:21、18:35、39:08でトータル105:04という驚愕のプレイタイムではあるが、それに言及する気にもなれない。どうもおかしいとは思っていたが、生身の人間がこんなナメクジ級テンポに耐えられる訳がない。特に長時間トレモロを刻むことを強いられる弦楽器奏者は堪ったものではない。きっと腱鞘炎を患う団員が続出しストライキが起こるだろう。(追記:後日某掲示板の【珍演】トンデモ盤総合【奇演】スレにて「一部の曲でオケが演奏を拒否して通常テンポで収録したのをPC処理で2倍テンポにしてピッチ調性したとの説もある」という書き込みを見た。)
 とにかくゲテモノ以前の作り物ゆえ評価にはまるで値しない。究極の論外盤である。"wav full CD file quality (44kHz 16 bit)" とやらは5ユーロだそうだが誰が買うかヴォケ!

おまけ
 その業者のページには以下のクレジットが記されているけれど、今となっては虚しさが残るだけである。

 EUROPA PHILHARMONIA ORCHESTRA
 VIENNA SYMPHONY LIBRARY
 MAXIMIANNO COBRA, Conductor

「なんじゃそれ」としか言いようがないぞ。ちなみにJ. F. Berky氏のディスコグラフィでは "Vienna Music Library and Europa Philharmonia Members Virtual Orchestra"(ウィーン音楽図書館およびヨーロッパ・フィルハーモニア楽団員による仮想オーケストラ)と見なしている。それが妥当だ。
 こうなるとHMV通販が扱っていたCD数種(モツ25、同40、ベト9その他)も同様にいかがわしく思えてくるし、「ヨーロッパ・フィルハーモニア・ブダペスト管& Cho」というオケ名からは俄然うさん臭さが漂ってくる。ここで上述のスレから少し引いておく。

 768 :名無しの笛の踊り:2008/04/04(金) 10:01:29 ID:r2+zhbzU
  コブラの9番聞きました。
  シンセの演奏のようですが、それならもっと静止的な演奏にして欲しかったですね。
  とにかく、普通のオケの演奏よりスコアの音符がが手に取るように見えるのが嬉しい。

 769 :名無しの笛の踊り:2008/04/04(金) 10:31:18 ID:e3tGA5xv
  コブラ盤ってシンセの演奏だったのか

 770 :名無しの笛の踊り:2008/04/04(金) 13:26:02 ID:0kh57RRX
  >>769
  物によってはそうだよ。明らかにシンセとわかる音。
  で、抗議が殺到したらしいが、製作サイドはそれを否定。かなり揉めたらしいよ。

 773 :名無しの笛の踊り:2008/04/05(土) 01:26:47 ID:itM9h6kf
  コブラはものによっては素人の打ち込みと大差ないからな。グレートとか。
  あんなもんをDVD-Aで売ってんだから笑っちまう。

 774 :名無しの笛の踊り:2008/04/05(土) 10:38:12 ID:XQ6y3iWK
  うわwマジでシンセだwww
  コブラ(笑)
  h t t p://hodie-world.com/cms_fr_full/component/option,com_docman/task,cat_view/gid,50/Itemid,32/lang,en/

 775 :名無しの笛の踊り:2008/04/05(土) 10:47:10 ID:9xRpNOHK
  >>774
  それをコブラサイドは、断じてシンセではないと反発し、返品要求を一切受け付けず。
  それからというものコブラの名前は消えていった・・・
   
  結局、あの理論なんてやっぱりデタラメで、金儲けのためにでっち上げた、というのが
  後で分かった事実。

こんな詐欺まがいの商売が成立するはずもない。現在「犬」サイトでもコブラ関係の製品がことごとく廃盤扱い(注文不可)となっている模様だが当然である。

追記
 本日(2008年6月16日)をもって当サイトの更新作業をしばらく停止することとした。別にコブラの毒に当たった訳ではない。(そんな大したモンじゃ全然ないし。)最大の理由はポピュラー音楽のディスク評執筆が完了し、とうとう手持ち(貯金)が底を突いてしまったからである。本当のことを言えば、ブルックナーについてはヴァントのDVDボックス(ライブ映像集成)とヤフオクで出来心落札した激安寄せ集め全集の分が残ってはいるのだが、今年から担当させられている科目の準備(資料とノート作成)に追われまくり(まさに「自転車操業」)のため、土曜日ですらレビューの作成に割く時間がほとんどないという悲惨な状況が続いている。(せめて平日の授業で埋まってない時間帯に農作業さえなかったらなぁ!)夏休みに入って少しは暇ができることを期待しよう。

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