交響曲第9番ニ短調
リッカルド・シャイー指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
96/06
DECCA 455 506-2

 6番ページにて不満を漏らしたが、当盤にもあまりありがたくないカップリング曲(バッハ/ウェーベルン 「音楽の捧げ物」より6声のリチェルカーレ)が入っている。(「こんな曲誰が好んで聴くかあ?」と思っていたが、何とドホナーニ6番のおまけも同曲らしい。)こんなん付けるんやったら、その分だけ売値を下げろと言いたい位だ。しかも、トラック4なのでブル9アダージョが終わった後に再生を止めるのが煩わしい。
 とはいえ、ここでも交響曲自体はなかなかに優れた仕上がりである。ビッグバン直前でテンポを落とすところ、一瞬間を置くところも許容範囲で収まっている。当盤で感心したのは響きの美しさ。シャイー&RCOのブルックナー録音の手始めだった4番からは7年半が経過しているのであるが、別団体と錯覚するほどに音色は異なっている。あの耳障りなゴロゴロティンパニが姿を消したこともあって、ドッシリと落ち着いているという印象である。この安定感はベルリン・フィルにも引けを取らないし、かといって時にあちらの欠点と感じるような重苦しさもない。ブロックの変わり目で時々テンポを変えているが、このような音色なら流動的な解釈にも不自然さを感じずに済むのかもしれない。もっともシャイーのテンポいじりは第1楽章14分過ぎなど一部に限定されており、それも控えめなのであるが。
 ところで、「シャイーのブルックナーは厚いところが薄くなっていたりする」というネット評を見つけたが、確かにその通りかもしれない。お陰で第1楽章21分30秒以降で弦が繰り返し弾く「レミレミファ」(ロ短調?)という旋律が聞こえたりする。ただし、それが私に物足りなさを感じさせるのも事実で、その辺りや23分53秒までの盛り上がりでは、いくら何でももうちょっと迫力が欲しいという気がする。要はティンパニを抑え過ぎなのが最大の原因である。(まあ、4番では余計者扱いしておいて勝手なものだとは自分でも思う。)そして、「ダダーン」のちっとも聞こえないコーダを迎えるのだから消化不良で終わってしまう。ティンパニが最強打されるのはラストの数秒間だけである。第2楽章や終楽章のフォルティシモは特に問題がないだけに、第1楽章終盤の失速および両端楽章のバランスの悪さがなければ、何せ録音は超優秀だけに同じオケによるハイティンク盤を上回る評価となっていた可能性もある。(贔屓の指揮者より上に置かずに済んでホッとしているというのが本音だ。)

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