交響曲第7番ホ長調
リッカルド・シャイー指揮ベルリン放送交響楽団(西)
84/06
LONDON F35L-50064

 シャイーの全集録音第1弾である。某掲示板に「随分変わった演奏」というコメントが出ており、それを読んだ時は「そうかなぁ?」と思ったのだが、改めてディスク評執筆のために聴いてみると、確かに冒頭から何だかネットリと絡みつくような感じだ。そもそも第1楽章と第2楽章がともに23分近いという演奏は他に思い付かない。(双方が20分台とか21分台なら結構あるように思うけれども、アダージョが遅い演奏は第1楽章がそれより少し短く、トラックタイムに数分の差が付くのが一般的ではないだろうか?)第1楽章は遅いけれども枯れたところは全くなく、濃密な演奏はチェリ&MPO盤よりはマゼール&BPO盤に近い。しかも、テンポいじりなしでも間延びすることがないのが偉い。朝比奈の75年盤にもこれくらいの精度があれば結構聴けたであろうに、と惜しまれる。実はそれを持ち出したのもちゃんと理由があって、当盤もコーダは相当にノロノロなのだが、それ以前のテンポ(楽章の基本テンポ)をちゃんと踏襲している。つまり、似て非なるというより別次元と言いたくなるほど完成度の高い演奏なのだ。アダージョも同様(よって省略)。後半楽章のテンポ設定も極めて妥当。トラックタイム(10分ちょうどのスケルツォと13分台のフィナーレ)からも、曲全体を視野に入れていることが明らかである。このバランス感覚も見事。「ブラヴォー!」と言いたいところだったが、終楽章のコーダ(12分ちょうどから1分20秒間)がスローテンポなのに困惑してしまった。逸脱行為に相当するかは微妙だが、私は採りたくない。
 指揮者の楽譜の読みや統率力もさることながら、オケの実力も相当なものに違いない。当盤は西のベルリン放送響(現在のベルリン・ドイツ響)によるブルックナーとして私が唯一所有しているものである。シャイーはこの後3番(85年5月)→1番(87年2月)→0番(88年2月)という順にこのオケとレコーディングを行ったが、どういう訳か88年12月の4番からコンセルトヘボウ管に鞍替えしてしまう。(オランダに愛人でも出来たのか? んなアホな。)あちらの録音では音色のため少々軽薄と感じられることがあったため、できることなら全曲このオケで録音してもらいたかった。ついでながら、ヴァント客演の正規盤はいつになったらリリースされるのだろうか? わたしゃもう待ちくたびれてしまったよ。

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