交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」
リッカルド・シャイー指揮ベルリン放送交響楽団(西)
85/05
DECCA 417 093-2

 比較的手薄な曲のため、Yahoo! オークションに開始価格400円で出品されていた当盤の入札に際して躊躇いは全くなかった。もちろんそのままの価格で落ちるはずはないと思っていたから、その3倍+αの額で自動入札しておいたのだが(自宅ではネットが使えないため、終了時刻が19時以降に設定されている場合は土壇場での逆転は不可能である)、翌朝来てみたら結局そのアルファがモノを言ったと判った。「無駄なし落札」とでもいえようか? 昨年(2005年)末に出品者より「メール便(クロネコ)で発送した」という連絡が入ったものの、大雪 and/or 歳暮シーズンの多忙のためか大幅遅配となり、受け取ったのは年が明けた1月4日である。(その間、出品者には懇切丁寧な対応をしていただいたので感謝している。)結果として、後に買ったはずの5番より聴くのが遅れることになった。
 その5番では(最後にコケてはいるが)まさに「中庸の美」とでもいうべき名演を実現していたシャイーであるが、この3番もノヴァーク3稿使用でトータル56分ちょっと。速すぎず遅すぎずというテンポである。なので凝縮型とも開放型ともいえない。音色は明るめだがヨッフムのような鋭さは感じられない。どちらかといえばソフトタッチの演奏で、他曲同様にリズムの厳格さより流れの良さが耳に付くが、そういうスタイルは2稿ならともかく3稿ではどうだろうかと少々不安に思いつつ聴き進んだ。案の定、第1楽章10分20〜56秒の盛り上げ方が物足りない。ほんの少しだが尻軽加速を行っているのも災いしている。思わず「ハズレだったか!」と天を仰いだ(ウソ)。ところが、それ以降が凄かった。11分30秒辺りが最も力が入っているという印象であるが、以後も12分40秒過ぎまでハイテンションを保つ。おそらくシャイーは伊吹山のような先鋭なピークではなく、霊仙のような山型のピークを思い描き、それを築こうとしたのだろう(ローカルネタ)。これはこれで立派だと思う。
 アダージョは重すぎず軽すぎずの足取りが曲想とピッタリはまっている。(4番なら少々明るすぎと感じたかもしれないが。)前楽章もそうだったがアホなテンポいじりなし。満点。驚いたのが第3楽章。それまで抑えてきたという訳でもないだろうが、一挙にエネルギーを開放しているかのように聞こえる。スケルツォ、トリオとも躍動感が素晴らしく、紛れもなくトップクラスの演奏だ。終楽章も冒頭から気合い十分である。ここも引き続き開放的だが、鋭さが時に品格の欠如(←横審かい)と聞こえて興醒めすることもあったヨッフムとは異なり、最後まで輝かしい響きを堪能することができた。ここまで聴くと、シャイーは特定部分を贔屓する(そこに焦点を定める)のではなく、盛り上げるべきと思ったところを律儀に盛り上げていることがハッキリ解る。チェリのSDR盤がそうだったが、3番はそういうスタイルもアリだと改めて思った。もちろん緻密なアンサンブルがあってこそだが。それにしてもオケの充実ぶりは素晴らしい。7番ページの繰り返しになるが、そして何があったかは知らないが、コンセルトヘボウ管への寝返りが返す返すも惜しまれる。

3番のページ   シャイーのページ