交響曲第9番ニ短調
セルジュ・チェリビダッケ指揮シュトゥットガルト放送交響楽団
74/04/05
The Bells of Saint Florian AB-8

 クラシックを聴き始めて間もない頃、妹が「ラヴェルの『ボレロ』という曲はすごくいい」と言っていたので、FM放送を録音した。私も非常に気に入り、テープが伸びるほど繰り返し聴いた。ビギナーゆえ、どういう楽器が奏でているか判らない所も少なくなかったのだが、特にあの「ドーーシドレドシラドッドラドー」の旋律が5度目に出てきた時は想像すらできなかった。もしかしたら、「ボレロ」専用に作られた手回しオルガンではないかとも思った。いずれにしても、その幻想的な音色には魅了された。ところが後日、カラヤン&BPOを購入した際にそのテープを手放してしまった。カラヤン盤はその箇所の響きが溶け合っておらず、どうやらホルンと木管楽器が吹いているらしいというところまで判った。(なお、BPOの重々しい響きが曲とは全く合っていないように感じられ、カラヤン盤は全く気に入らなかった。)後にN響アワーを観て、ホルン&フルート&ピッコロ&チェレスタの四重奏であることがようやく判った。(ちなみに、その演奏でも溶け合ってはいなかった。)さて、例のお気に入りのテープの演奏者(指揮者&オーケストラ)名は記録していなかったのだが、99%以上の確率でクリュイタンス&パリ音楽院管盤であると言える。同曲の名盤選びで常に上位に来るその盤を中古屋で買って聴いたところ、あの溶け合った響きはまさに記憶通りだったからである。(テンポも、それ例外の箇所の響きもピッタシだった。)
 ずいぶん長い前置きだが、この演奏における第1楽章の「ビッグバン」(2分17秒〜)の響きも見事に溶け合っている。即座に『ボレロ』のクリュイタンス盤を思い出した。が、このケースでは「ガッカリ」であった。屋根に登ったところで梯子をはずされたような感じである。確かに「揃いも揃ったり、お見事!」としか言いようのないユニゾンだが、それが仇となって全く迫力不足と感じられたからである。ここに限らず、私のブル9第1楽章のイメージ(宇宙誕生)とはあまりにもかけ離れた演奏で、聴後の脱力感はどうしようもなかった。(つまり「悪い」ではなく「嫌い」である。3番ではユニゾンの揃いっぷりを「見事」と感じたのだから。)第2楽章も同様。しかし終楽章はそこそこ聴けた。
 前置きの方が演奏評よりも長いというどうしようもないディスク評で面目ない。ところで、この演奏は最初はDG正規盤で聴いた。もしかしたら(少しは良くなっているかな)と期待して「鐘」盤を買ったが、力なさは同様であった。だからDGに罪はない。ただし、低音と高音を若干強調しているようである。ゆえに不自然さがなく耳に優しいと感じた当盤を残した。

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