交響曲第8番ハ短調
セルジュ・チェリビダッケ 指揮シュトゥットガルト放送交響楽団
74/12/20
METEOR MCD-050〜51

 9番SDR盤のページに書いたが、私はクラシックを聴き始めた頃は楽器の名称すらろくに知らなかった。特に木管楽器からどんな音が出るのかはチンプンカンプンだった。それが最初にわかったのはN響アワーで「ピーターと狼」の演奏を観た時だった。登場人物&動物を演じる楽器の中で一番面白い音だと思ったのはオーボエで、次がクラリネットだった。やはり役柄の性格を反映している。気難しいお爺さん役のファゴットには「渋い音」という印象を持った。しかし、いろんな曲を聴くうちにファゴットの音色こそ最もオモロイと思うようになった。モーツァルトの協奏曲がそうだし、ショスタコの15番の3楽章の12音や無調を多用した不気味な音楽でもファゴットだけは剽軽な感じがする。極めつけはニールセンの6番の終りである。
 さて、チェリの8番を聴くと私はこんな風景が目に浮かぶ。人生を大きく左右するであろう入学試験が始まった。当然のことながらピリピリとした空気が漂っている。ところが開始後まもなく「ブー」という大きなオナラの音。「クスクス」という笑い声があちこちから聞こえる。厳粛さはいっぺんに破れてしまった。(前段落で挙げたニールセンは何度聴いても放屁を描写したとしか思えない。)他の楽器が真面目に演奏しているのにファゴットだけふざけているように聞こえてしまうのである。あそこをクラリネットではなく、ファゴットに吹かせているのはチェリだけである。たぶん改訂版にも書かれていないのだろう。なぜわざわざ脱力するようなことをしたのだろう。(浅岡弘和も「御愛敬」と書いていた。)一度だけの気紛れならともかく、それを最後まで貫いたのは全く不可解である。ヴァントのようなインタビューは残っていないのだろうか? とはいえ、すぐに厳粛な雰囲気は戻るので些細と言えば些細である。だからこの辺で止める。
 改めてジックリ聴いてすごくいい演奏だと思った。よって順位もヴァントのページ完成時より上昇させる。チェリの唸り声が所々で聞こえ、オーケストラもそれに応えるように熱い演奏を繰り広げている。トータル約85分は長い部類に入るが、決して「ありえない」ようなテンポではない。特に後半2楽章がそれぞれ28分台と26分台というのが目を引く(前半は普通)が、聴いていてダレるということも決してない。
 MPOとの93&94年盤を聴いた後、SDRとの8番もぜひ入手したいと思っていたのだが、正規盤でも海賊盤でもどちらでも良かった。ただし前者は2枚組(シューベルトの5番を併録)あるいは後期3曲セット4枚組とも高価で、オークションでもそこそこの値が付くのが常であった。(ちなみに、8番にシューベルトをカップリングするアイデアは悪くない。必然的に2枚組になるし、結構余白ができるのだから。どっかのダメ業者も見習ったらどうだと言いたい。「展覧会」ぐらいなら入るぞ。)ある日出品されたMETEOR盤に入札したところ、出品価格のまま落ちてしまったので拍子抜けした。確か1000円以下で出品者に申し訳ない気がしたため、数十円上乗せして1000円(プラス送料)払ったと記憶している。その後も何度か出品されているのを目にしているが、1500円にも届かないまま終了しているようである。これほどの名演がこんなに安いとは世の中間違っている。なお、DG正規盤は2年後の別演奏とのことだが、時間が少し短くなっている(特に3楽章)のは興味深い。こればっかしだが、安いなら入手したい。

おまけ
 「試験時間での放屁」で思い出したことを書く。私は滋賀の生まれで、高校2年生の時に始まったKBS京都ラジオのある番組を愛聴していた。水曜22時といえば判る人には判ると思うが、ごく一部には伝説とされている番組である。DJのつボイノリオがある日、「緊張感を解き放つには脱糞するのが一番」という所からスタートし、「ならば試験会場でそれをやったら、自分は落ち着くし周りは動揺するので一石二鳥」と暴走した。(彼は自分でそれを言った後に吹き出した。)センター入試ではなく、ライバルが同じ部屋に結集している個別入試なら非常に効果的であろう。監督者につまみ出されなければ。なお、私の脱線癖、暴走癖はあの番組を長い間聴いたことに起因するところも大きいと思う。(つボイは「枝葉」という言葉をしょっちゅう使っていたが、主幹をそっちのけにして枝分かれの先へ先へと入り込むのはなかなかに楽しいものである。情報を発信する側にとっては。受け取る側のことなど知らん。)脱線ついでに書くと、私は当サイトのあちこちで下ネタに類することをこれからも書くと思うが、決して「スカトロ趣味」はない。なお、モーツァルトが得意にしていたことからも「スカトロ」はきっと高級な趣味なのだろうと思う。決してバカにしてはいけない。一介の地方公務員(大学助手)に過ぎない私には敷居が高すぎるのだ。

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