交響曲第8番ハ短調
セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
94/04/23
AUDIOR AUD-7001〜2

> 今回はマドレデウスについて書くことが主目的なので、他の話題は手短に
> しますが、マゼールのNYP就任には驚かされましたね。他にもゲキ痩せし
> て骨と皮状態になったアバドを見た時も愕然としましたし、最近では何と
> いってもシノーポリの急逝。私が隠居している間にクラシック界にはショッ
> キングな出来事が目白押しでした。そうそう、私事ですがファンの間で名高
> い「リスボン・ライヴ」を遂に手に入れました。といっても、マドレデウス
> ではなくて恐縮ですが、チェリビダッケ&ミュンヘンフィルのリスボン公演
> 時のブルックナー8番の海賊盤のことです。同曲のEMI正規盤を聴いて「確
> かに立派だけど遅くて退屈だなぁ」と思ったのですが、ネット上では「リス
> ボン・ライヴ」の評価がはるかに高いことを知ってどうしても欲しくなり、
> Yahoo Auctionで3度目の正直で落札できました。果たして期待をはるかに上
> 回る超名演で、これまで私はチェリの真価の半分も理解していなかったこと
> を思い知らされました。脱線はこれくらいにします(この点については誠さ
> んと話した方がいいようにも思いますので)。(01/04/30)
(補足:「誠さん」というのは他のページにも登場する東京在住のMさんの
     ことである。ただし、「誠」はハンドルネームの一部である。
     彼は首尾良く「リスボン・ライヴ」を入手できたであろうか?

 上を読めばお分かりのように、この世には「リスボン・ライヴ」と呼ばれる名盤が2種存在する。(もしかすると、この土地には超名演を生み出す魔力のようなものが潜んでいるのかもしれない。)1つ目はポルトガルのグループ、マドレデウスの演奏会を収録した2枚組CD(正式名は「ライヴ・イン・リスボン」)である。彼らのディスクは6種類所有しているが(2004年中に7種類目が加わる予定)、残念ながらこれは廃盤のため入手していない。というより、クラシック以外のライヴ盤は基本的に敬遠している。客席の熱狂が却って興醒めになるからである。(コンサートにも滅多に行かない。これはスピーカーで増幅された音が大嫌いなせいであるが。)
 もう1つが当盤である。元は2枚組で2000円程度、バーゲン時には1000円以下で売られていたということだが、在庫がなくなってからは人気沸騰し、ヤフーオークションでも価格が高騰した。私がその存在を知ったのもその頃である。オークションで入手を図ったものの、4000円でも落札できなかったので「これは容易ではないぞ」と腹をくくったのだが、8番の目次ページに訂正として書いたように、その他海賊盤2種と併せて7200円で落とせてしまった。(確か「リスボン・ライヴ」は3種中最も高額だったが、それでも2500円か2600円だったと思う。)予想以上にアッサリ入手できたので拍子抜けした。が、その後しばらくして「都内でリスボン・ライブが大量発掘」というニュースが某巨大掲示板に投稿され、間もなく別ページで触れた「悪魔の店主」のサイトでも2400円で売られることになった。焦って少し損をしたのかもしれないが、まあいい。当然ながら発掘品がはけてしまってからは再度高騰している。(2004年5月に再々発掘され都内某店で売っているという書き込みがあった。真偽のほどは知らない。)
 このディスクには、EMI正規盤の弱点として述べたのと全く逆のことがそのまま長所として挙げられる。当盤と正規盤の楽章間(1楽章と2楽章、および3楽章と4楽章)を聴き比べてみれば一耳(?)瞭然であるが、当盤は2枚のディスクともタップリ(1分以上)取られたインターバル中のザワザワ感が臨場感を高めている。一方、正規盤にも会場ノイズ(観客の咳や囁き声など)は入っているものの、全体的にはかなり(不自然なほど)静かである。またインターバルが30秒以下であるが、本当にそれだけしかなかったのだろうか? 編集(カット)しているのではいかと疑問を抱いてしまう。演奏自体についても同様で、ノイズもろとも生気までもが奪われてしまったような正規盤とは異なり、当盤のとくに後半2楽章にノロさや退屈さを感じるようなことは全くなく、演奏の巨大さにいつしか引き込まれてしまっている。第3楽章では両盤の演奏時間に2分近くの差があるのだからまだ解らないでもないが、終楽章のトラックタイム差は1分を切っているにもかかわらず印象は大きく異なっているのだから、もはやテンポが適正であるかという問題ではなく、「随伴現象」が入っているか否かの違いに原因を求めざるを得ないと思う。
 当盤を聴くまで私はチェリの実力をヴァントのそれより明らかに下だと思っていた。その頃作成した自己紹介ページ中のブラ1のランキングでも、ヴァント旧盤>チェリSDR盤>ヴァント新盤>チェリMPO盤、としていた。けれども今では両者を同格に置いているし、この曲に関しては8番目次のページに書いた通りである。(なお、後にブラ4もチェリとヴァントについてそれぞれ2種類ずつを所有することになったのだが、面白いことに不等号の向きは正反対になる。)
 最後であるが、「この演奏の偉大さは実際に聴いていただかないことには解らない」と書きかけたものの、あまりも陳腐(当盤に限らないこと)なので取り消す。代わりにKさんに送った次の文章を載せておく。

> 実際のところ、長い間探していたのを遂に中古屋で発見した、あるいはネッ
> トオークションで苦労して入手したというような廃盤や海賊盤ならば、それ
> だけで既に感動は半分以上約束されたようなものですからね。

ということで、できるだけ苦労(高額落札するなど)して入手するのが望ましいと思う。流した汗と涙の量が多いほど感動が大きくなのはたぶん間違いないから。(なんちゅう無責任な終わり方。)

8番のページ   チェリビダッケのページ