交響曲第7番ホ長調
セルジュ・チェリビダッケ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
92/04/01
DUMKA DCD-30-03〜04

 チェリが37年ぶりにベルリン・フィルを指揮した特別演奏会の録音らしい。演奏後には「かつての(自分が知っている)ベルリン・フィルではなかった」と語っていたということだが、もしかしたら自分ではなくカラヤンを常任指揮者に選んだオーケストラに対する私怨も多少は含まれていたのかもしれない。
 ところで、私はかつてKさんに「今まで好きだったアーティストの新作に感動できなくなった時には、まず『自分は堕落していないか』と疑ってみるだけの謙虚さを持つべきだ」というようなことを書いたことがある。要は、チェリにも「お前だって昔とは変わっとるだろうが!」ということが言いたかっただけなのだが、そんなことはカケラにも思わないような傲慢さを持ち合わせていなければ、オーケストラの常任指揮者というものは務まらないのであろうか?
 この演奏は猛烈にノロい。冒頭2楽章だけノロいという演奏は他にもあるが、全楽章を通じてノロいのはこの盤だけである。(聴いたことがないが、常軌を逸したとしか言えないようなスローテンポで知られるコブラという指揮者ならば、あるいはチェリを超えられるかもしれない。聴きたくないけど。)つまり全曲を通して首尾一貫したノロさとは言えるわけで、どうやら指揮者が信念を持ってこのテンポを設定したことは確かなようである。録音は今一つで、「随伴現象」(8番EMI正規盤のページ参照)欠如がノロいと感じる大きな原因の1つかもしれない。
 とは言いながらも、やはりノロいものはノロい。あの30分を超えるアダージョも、冒頭を聴くとそんなに長くかかるようなテンポとは思われない。途中の何カ所かで止まりそうなほど遅くするのだ。だから、89年MPOと同様に一応メリハリは付けている。だが、やはり限度というものがある。あるクラシック総合サイトで、この演奏に対する「指揮者の設定したテンポをベルリン・フィルが支え切れていない」という評価を読んだが、それはオーケストラの責任であろうか? チェリは「(自分が鍛え上げた)ミュンヘン・フィルよりも技術は劣る」というようなことも述べていたらしいが、意図してミュンヘン・フィルとの演奏時よりも遅いテンポで振ったとしたら、そういうことは言うべきではない。アンフェアである。
 ここからは妄想モード(2種)に入る。チェリは最初から喧嘩別れをするつもりで、リハーサル時からあのノロノロテンポでベルリン・フィルに演奏させ、メンバーが噛み付いてくるのを待った。とっとと帰るつもりだったのだ。が、誰も噛み付かなかったので仕方なく本番に臨んだ。もう1つは、彼がリハーサルとは全然違うテンポで振るという悪戯(嫌がらせ)を試みた。内心ではクスクス笑いながら、というものである。あのような大人げないコメントをするから、こちらもこんな子供じみた妄想をしてしまったのだ。ボクはわるくないもん!

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