交響曲第5番変ロ長調
セルジュ・チェリビダッケ指揮シュトゥットガルト放送交響楽団
81/11/25〜26
The Bells of Saint Florian AB-13〜14

 ミュンヘン・フィルとのAUDIOR盤(AUDSE-523/4)に先立つこと4年前の録音で、DG正規盤と同じ音源を使用しているらしい。トータル83分台というのは85年盤と1分も違わないし、各楽章のトラックタイム(第2楽章のみ当盤、他は「緑」が長い)にしても差は全て30秒以内である。さらに同じ「緑」の86年盤(AUD-7007/8)や最晩年の93年EMI正規盤と比較してもトータルタイムは4分程度しか違わない。これはチェリにしては驚くべきことである。ミュンヘン・フィル時代はシュトゥットガルト放送響時代よりも大幅にテンポが遅くなるとともに、深い沼のような神秘性も帯びるようになるのが常だっただけに。ミュンヘンでの活動初期にあたる81年には、この曲の演奏スタイルが既に完成していたということなのだろうか? スケールの大きさという点ではいい勝負の8番とは対照的で非常に興味深い。(ただし、8番のSDR盤は正規盤、海賊盤とも70年代中頃に録音されているので、80年代以降のMPO盤との対比も際立ったものになる。70年代後半から80年代初めにかけてチェリの芸風に大きな変化があったかもしれず、この5番でも70年代の録音が発掘される日を待ちたい。)チェリの8番は、5番と同じくSDR常任時代から2枚組=80分以上だったが、時代とともにテンポはどんどん遅くなり最終的に100分を超えるようになった。もしかしたら、8番は極めれば極めるほど底が知れない曲ということなのだろうか?
 このディスクは演奏も録音も決して悪くないが、AUDSE-523/4があまりに素晴らしいのでどうしても聴き劣りする。またSDR時代の特徴である抑制が、この曲ではややマイナスに作用している感もある。さらにティンパニの打撃音の分離が悪い。「ゴロゴロ」「ドロドロ」に聞こえるのがSDRの特徴であるが、この盤では持続音のように聞こえてしまい非常に耳当たりが悪い。曲のエンディングではちゃんと分離して聞こえているので、チェリがどうしてあんな風に叩かせたのかは謎である。

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