交響曲第5番変ロ長調
セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団(85)
85/11/10
AUDIOR AUDSE-523〜4

 トータル75分台のマゼール盤(旧規格ではCD最大収録可能時間が74分強だったので2枚組になっているが、現行規格の再発廉価盤では1枚に収録されている)、同じく76分台のヴァントBPO盤の次に購入した5番のディスク。ゆえに84分を要する当盤はかなり遅く感じて当然で、確かにその通りなのだが、8番EMI盤のように途中で退屈したり寝てしまったりというようなことは全くなかった。当盤は今もって私が所有する5番の中で最長演奏時間であるが、他の演奏と比較して特に時間をかけているのが第2楽章である。他楽章は「やや遅いかな」という程度であり、それゆえに「退屈」と感じなかったのであろう。(メリハリがなく全体的にノロい演奏は最悪だ。誰とは言わないが・・・・)そして、このノロい第2楽章がとてもいい。楽章内でもメリハリが聴いている。中でも遅いところは思い入れたっぷりという感じで泣かせる。第3楽章も結構気に入った。インテンポには必ずしも拘らず、スケルツォ主部では曲想が変わればテンポをガラッと変えるし、足を徐々に速めたりもする。このあたりはチェリが「構造派」のヴァントとは全く違うタイプの指揮者であることを端的に示している。終楽章のエンディングはヴァント&BPO盤のようにオケの馬力で聴かせるのではないが、ゆったりした(かといってノロ過ぎない)テンポによって極めてスケールの大きな演奏を実現している。
 実は「シェエラザード」DG盤→8番EMI盤と聴いてあまり感心しなかったので、「もしかしたらコイツ口先男とちゃうか?」と思い始めていたのだが、それが全くの誤りであったと気づかせてくれたのが当盤である。(そして次の3番SDR盤で完全に開眼する。)録音は私が所有しているディスク中で最高ランクである。なお、同じAUDIORから翌86年らしき別演奏(「ブルックナー・ザ・ベスト」への投稿で間違えて書いてしまったAUD-7007/8)もCD化されているが未聴である。こちらはさらに遅く、トータル87分を超えている。「録音はもう一つだが、第2楽章はAUDSE-523/4(当盤)より上かもしれない」というネット評を読んだことがあるので、安価なら入手したい。やはり87分台のEMI正規盤(93年のこれまた別演奏らしい)も同様である。
(信じがたいことに5番の最長演奏記録保持者はチェリではなく、シュタインによる2000年の演奏が92分強で最長らしい。海賊盤CD-Rが出ているらしいが、「シュタイン」がホルスト・シュタインだとするとさらに信じがたい。)

2004年8月追記
 Yahoo! オークションに出品されていたEMI正規輸入盤を1300円にてゲット。AUD-7007/8を狙っていたのだが、希望価格の範囲内(1500円程度)では出品されず結局正規盤入手となった。演奏時間は両者にさほど違いはないので、まあいいだろうと思っている。むしろ当盤とは一味違う最晩年の境地が聴かれないかと楽しみにしている。(もちろん聴後にディスク評を掲載するつもりである。)

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