交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
88/10/16
METEOR MCD-020〜021

 私が名古屋に住んでいた頃、チェリビダッケ&ミュンヘン・フィルのコンサートが地元で開かれるということを知ったのだが(愛知県芸術劇場ができる前で、市民会館での開催だったはず)、演目が「ロマンティック」1曲だけではコストパフォーマンスが悪いと思い、結局チケットは取らなかった。「その前にモーツァルトの交響曲ぐらいやってくれんのか?」などとケチくさいことを考えたこともしっかりと記憶に残っている。(当時はあんまり金もなかった。たしかS席が¥18,000だった。)無知だったのだ。チェリのブル4が(他の指揮者による8番などと同じく)時間的にも内容的にも1日のコンサートを構成するに十分に足るということを。お陰であの衝撃的なエンディングを生で聴く千載一遇のチャンスを逃してしまった。まさに痛恨の極みである。
 さて、このMETEOR(いわゆる「紫」)盤であるが、ヒスノイズがかなり耳に付くなど音質は良くない。「未完成」がカップリングされているが、極めて美しい演奏ではあるもののヴァントのような凄味を感じることはない。(チェリはこの曲にはさほど共感していなかったのか?)したがって、激安の「紫」を見つけたというのなら話は別だが、やはり同音源のEMI正規盤を買われた方が良いだろう。78分以上の演奏をちゃんと1枚に収録しており、(7番や9番とは違って)珍しくアコギな真似はしていない。音質もきっと悪くないのだろう。「これに文句を言う人間はいったいどういう音質が満足なのか?」「EMI正規盤の中では最高レベル」というネット評が出ていた。
 中間楽章はSDRと比べてもさほど遅くなってはいない。第1楽章は2分以上遅くなっているが、ノロいとは感じさせない。さすがである。この楽章終わりのフワッと軟着陸させるやり方が83年(?)の映像以上に徹底しているなど、非常に手間暇かけた演奏という印象を受ける。が、やはり凄いのはやはり終楽章のコーダである。浅岡弘和が自身のサイトでしつこいほどあの「超常的解釈」について語っていたので、「いよいよ来るぞ来るぞ」と身構えていたのだが、それでも聴いているうちに寒気を覚えてしまった。 予備知識なしにあの部分を耳にしていたら即座にひっくり返り、その晩は悪夢にうなされていたに違いない。

4番のページ   チェリビダッケのページ