交響曲第8番ハ短調
カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
76/02
Deutsche Grammophon UCCG-9094

 あるクラシック音楽総合サイトには、当盤に対する「『隠れた名盤』という不当な扱いは全く解せない」という評が出ているが、私には「隠れた名盤」という扱いすら解せない。某掲示板には「ベームの8番(当VPO盤)はスカスカ」というような書き込みがあったが、そちらに同感である。
 トータルタイム80分を超える演奏であるが、それだけの時間を要するような堂々とした演奏ではなく、70分台前半のサッサと過ぎ去るような演奏に聞こえてしまう。つまり音の密度、さらに言えば演奏の中身が薄いと感じられてしまうのだ。本来72分の中身を水割りで80分にしたような印象。鈴木淳史が朝比奈のブルックナーに対して用いた「ハリボテのような演奏」は当盤にこそピッタリの形容である。(トータルがほぼ同じマゼール&BPO盤が充実した演奏を聴かせてくれるのとは対照的である。)これなら他のチューリッヒ盤やケルン盤のように快速テンポで振った方がずっと良かった。7番なら薄くとも「枯れた演奏」としてそれなりに聴けてしまうのだが、この8番ではそれが致命的になってしまっている。最大の原因は金管の鳴りが弱いことによる迫力不足である。(主題を吹くところでは鳴っているが、それも「がなっている」感じである。)弦楽器はよく捉えられているが、それに釣り合うだけの管楽器(特にブラス)が入っていない。だから、フォルティッシモでは弦とティンパニだけが目立って響きが汚くなる。ジュリーニ盤やカラヤン88年盤も似たようなところがあるが、ここまで酷くはない。たしか「7番と8番もデッカが録音して欲しかった」という書き込みを某掲示板で見たが、それならかなり印象も違っていた可能性は高い。残念である。
 ということで、第12楽章はかなり不満が募る。比較的遅くて静かな3楽章は悪くないけれども、やはりクライマックスの鳴りが足らないため、解決不十分のまま終わってしまう。終楽章はいきなり汚い響きで始まるので、もう勘弁してくれと言いたくなる。結局、全曲聞き終えてもストレスが堪るだけである。私は1枚ものを1200円(×0.85)で買ったので被害は少なかったが、かつてこれを2枚組(F66Gxxxxx?)で買わされた人のことを思うと不憫でならない。(←大きなお世話)

8番のページ   ベームのページ