交響曲第7番ホ長調
カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
76/09/26
Andante RE-A-4070
録音年月日に示されているように、これはDGによるスタジオ録音の3日前の演奏会を収録したライヴ盤である。「ライヴのベームは別人」とはよく言われることだが、同じオーケストラによるわずか3日違いの演奏が果たしてそんなにも違うものだろうか? 某巨大掲示板では、たしか「スタジオ録音とは全く別物の充実した演奏」という評が出ていたが、どうやら過去ログ倉庫行きになったようで見当たらない。当盤のことだったか、あるいは「紫」や数種CD-Rによる海賊盤収録のバイエルン放送響との演奏(77年)のことだったかも判らなくなってしまった。そこで実際に聴いてみた。
録音は非常に優秀である。会場ノイズを拾ってはいるが、些細なものなので鑑賞の妨げにはならない。(DG盤は音が遠く聞こえるが、同じホールでの収録で客が入っている方が音が良いというのは通常とは逆パターンではないか?)ノリは確かに良い。トラックタイムはスタジオ盤よりも少しずつ短く(拍手を除いた正味の終楽章の演奏時間は11分47秒)、概してテンポは速めである。特に第1楽章はかなり軽快な感じである。4分23秒過ぎから少しずつ加速し、ついには「おいおい、何するんや?!」と言いたくなるほどすっ飛ばす。他にも早足になるところが何度か聴かれるが、何れも上滑りになる寸前で踏みとどまっている。逆に遅い部分に注目すると、当盤でも5分56〜05秒まで「パーパカパッパカパッパカパー・・・・」で見得を切っているが、スタジオ盤よりは控え目である。8分過ぎからチェロが泣くように歌うところも極端なノロノロにはしない。お陰で「大根」ぶりも程々で収まっている。ライヴの方が抑制が利いているというのがよく解らないが、とにかく弛緩はしていない。コーダの加速は「尻軽」になる一歩手前、最後のティンパニもこれまた何とかかんとか決まっているというように、まるで綱渡りのような演奏である。次の第2楽章は淡々と進めているが非常に美しい。完成度も前楽章より高い。合わないところもない訳ではないが、危なっかしいと思うほどではない。クライマックスも微妙にずれているかもしれないが、スタジオ盤のように騒がしくはならないので聴けてしまう。後半2楽章は第1楽章と同様に推進力の感じられる軽快な演奏だが傷はない。(あっても耳には障らない。)
ということで、基本テンポこそ少し速く設定されているものの、やはり3日の違いは演奏スタイルに大きな違いをもたらすものではなかった。だから、当盤目当てにこの高価な4枚組を購入する必要はないと思う。ただし、繰り返し述べたようにライヴゆえのノリの良さとともに微妙な「崩れ」(指揮者の高齢のせいもある?)があり、それが何とか許容範囲に収まっているがために、聴いていても不快に感じるどころか却ってスリリングで面白い。やはり観客を前に無様な演奏はできないということで、最後まで緊張感を保っていたのだろうか?
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