交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
カール・ベーム指揮シュターツカペレ・ドレスデン
36/01
CENTURION CLASSICS IECC10018(全集)

 この10枚組激安(通販で2000円前後)全集の発売情報を察知したものの、ほとんどが古いモノラルと判ったため一度は「なーんだ」で終わってしまった。が、ロジェストヴェンスキーの0番が前から欲しかったこともあり、改めて中身を検討したところ、同レーベルが内容の若干異なる2種類を出していると判明した。具体的にはIECC10018とIECC10028とは479番が別演奏なのだが、後者の7&9番がフルトヴェングラー&ベルリン・フィルの録音(ともに既所有)だったため、それらにシューリヒトのものを採用した前者をターゲットに絞った。そして1000円でヤフオクに出品されていたのを無競争落札に成功。なお、あちらに収められたアーベントロート&ライプツィヒ放送響の4番は、その気にさえなれば安く手に入るだろうと高をくくっている。(実際、徳間の国内廉価盤が東京都内の中古屋にて500円で売られていたのを見送ったことがある。)ということで、3番以降で初入手となった4679番についてのみ新たにページを立ててコメントする。
 まずはベーム&SKDの4番から。Berky氏のディスコグラフィにはオケ名が "Saechsische Staatskapelle" とあったので最初は訝しく思ったが、何のことはない。要は旧名称に過ぎず実質的には同一団体である。なお、このベーム&ザクセン国立(州立)歌劇場管弦楽団による演奏は某社から国内盤(TOCE-15001)もリリースされた模様である。
 戦前の録音ゆえ音はさすがに古めかしいが、テープの状態は良好だったようでノイズも音揺れも少なく聴きやすい。何といっても第1楽章の快速テンポが印象的である。トラックタイムは約17分半。73年VPO盤が20分強だったからエラい違いだ。終楽章も19分台 vs 約21分と少なからぬ差異がある。(そしてトータルも62分台から約68分台へと37年の間に1割弱伸びた。)第1楽章で頻繁な加速が聴かれるなど私の好みからは外れている(註)ものの、緩んだところなきにしもあらずのVPO盤よりも完成度では明らかに上回っている。(註:それでも超イラチのクレンペラーほど気には障らなかった。)アダージョ中間部など弦の刻みが几帳面に過ぎると聞こえるため、あるいはヴァントの若い頃の演奏として通用してしまうかもしれない。後半もキビキビしたところは結構評価できるのだが、やはりスケール不足の感は否めない。

おまけ
 このボックスに採録された演奏のうち、独立ページを設けないものについてテキトーに記すことにした。
 ロジェベンの0番は改めて聴いても素晴らしかった。この荒涼とした音楽に文科省響の超攻撃的音質(耳に刺さってくるという意味で)がハマりにハマっている。この1枚だけで十二分に元は取れたため、残る未聴ディスクが全てスカでも許そうという気になった。
 1番の演奏者について「塔」通販には「H.Byrns(指揮)、ベルリンRIAS」とあった。オケはいい。が指揮者には参った。読み方すらわからない。何とかかんとか「ハロルド・バーンズ」というのを見つけたが、正体は依然として不明。どうやらマーラーの交響曲第10番の演奏禁止措置の解除を求めるためにアルマを訪れたうちの一人らしいというところまでは判ったものの、録音や演奏活動に関する記述はいくら検索しても全く出てこないため途方に暮れるよりなかった。(「戦場はどこだ!」という映画の音楽を手がけたのもこの人だろうか?)が、Berky氏のディスコグラフィ(fullsets)に "Harold Byrns RIAS Orchestra Berlin (Actually G.L. Jochum)" とあったため、それで落着させることにした。で、そのヨッフム弟の1番だが、2番とともにTahraの兄弟全集ボックス(TAH 162-170、4678番が兄Eugen、12359番が弟Georg-Ludwigの指揮)に収録された演奏と同一のようである。トータル43分と相当に速い。先述の箱に載っている顔写真からは、さほどせっかちとは思われないのだが。(カットの有無については確認していない。)かと思えば2番には59分もかけており、兄の2種録音よりもかなり長いからサッパリ訳が分からない。何にせよ、モノラル録音(註)のこれら2枚を再生する日が当分訪れそうにないのは確かだ(註:それでも56年録音とされる1番の方が44年の2番よりも圧倒的に音が良い。)
 クナ&バイエルン国立管による3番は既所有のMusic & Arts盤と同じ演奏。音質も互角。ただし、楽章間インターバルを編集する際に生じた空白によりライヴの感興を削がれるのが少々痛い。
 アベトロの5番は相も変わらず私が苦痛に感じるほどの低いピッチであるから、やはり原テープの段階で狂ってしまっているとしか考えられない。Arioso盤と聴き比べても音質差は確認できなかったので、新たに修正盤(青裏)を作るようなことはしない。

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