交響曲第7番ホ長調
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン
80/06/30〜07/03
DENON COCO-85054

 目次ページで触れた「名曲名盤300」(93年版)における渡辺和彦の推薦コメントは「オーケストラの音色と、デンオンによる素晴らしい録音が最大の魅力。同じオーケストラがヨッフムと入れた76年のEMI盤よりも、その点で上を行く。」である。しかし、私の評価は4番とは異なり僅差の判定ながら「ヨッフム盤>当盤」である。テンポの変化を大胆に付けながらも不自然さをほとんど感じさせないという点で同タイプの演奏ながら、第1楽章コーダの微加速は辛うじてセーフという危険レベルだった。また、クリアーな音質のせいか金管の活躍する部分(例えば第1楽章6分30秒付近)では耳当たりがきついと感じてしまうことがある。(翌年録音された4番を聴いた後では、未だ落ち着いていないとも聞こえる。)そのクセ、アダージョのクライマックス前後はトランペットの鳴りが足りないせいで少々情けない。(特に19分30秒過ぎのナヨナヨは勘弁して欲しい。)逆に21分22秒以降のホルンはうるさすぎ。とはいえ、他にこれといった減点対象は見当たらず、立派な演奏と評価することにためらいはない。後半はケバい音色がメリハリと躍動感を強調したスタイルとピッタリはまっている。
 ということで、ブロムシュテットは「ブルックナー指揮者」ページで述べた「47系親和性指揮者」に分類できると私は考える。そうなると(これから試聴に臨む)3番も大いに期待できる訳だし、DECCAに入れた69番の評価がそれほど高くなく、さらに58番の正規録音が未だ行われていないことも納得がいく。ただし、58番にしてもラジオ放送や来日公演、あるいは既にリースされている青裏についてのネット上の評価はかなり高いようであるから、これ以上は聴いてみないことには何とも言えない。

おまけ
 当盤の「剛毅で彫りの深いブルックナー」という解説を執筆したのは「レコ芸」月評のもう1人の交響曲担当者である小石忠男。宇野とは対照的に、いったん惚れ込んだ音楽家は多少不出来でも持ち上げるという一貫した方針を持つ「男の中の男」である(ハイティンク4番ページ参照)。頑固一徹ともアフターサービス満点ともいえようか。その評自体は文句の付けようのないほど立派なものであるが、括弧付きで長々と引かれている指揮者の発言(要約)には疑問を感じるところがあった。「ブルックナーはテンポを動かさぬことを望んでおり、アッチェレランドでもテンポを変えていない。いや、アッチェレランドすら望まぬ場合が多い。ある人はそれを単調というが、ブルックナーがそのように書いているのである。そのため私は書かれたとおりにやる。もちろん、いくらかは表情を付け加えるかも知れないが、その程度が問題なのである。」実に見事な見解だが、私は当盤から「表情づけ」に留まらない「解釈」が聞かれるように思えてならない。もう一つはオケについで述べた部分。「ほかのオーケストラでは、どうしても最強音が金属的となって、鋭い感じをつくるが、シュターツカペレ・ドレスデンの連中は、むかしからそのことを嫌っている。」それならどうして昔から(ヨッフム時代から)あんなケバケバしい響きを聞かせているの?

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