交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮サンフランシスコ交響楽団
93/05/31〜06/01
DECCA 443 327-2

 私はブルックナーCDの所有リストをエクセルで管理しているのだが、当盤のデータを入力しようとして驚いた。録音年月日の欄に「93」と入れただけで正しい月日までが表示されてしまったのである。慌てて検索したところ、ウェルザー=メストの5番(EMI)と同一であることが判明した。まさかどちらかのレーベルがレコーディングをぶつけたということはないだろうな。(←意味ないって。単なる偶然だろう。)
 81年の旧盤と比べてもトータルで30秒ほど長くなっただけ、各トラックタイムの差異も1分以内に収まっている。第1楽章は約19分だが、その割には冒頭から快速テンポと感じる。マズアが得意とした「速めにスルスル作戦」(許光俊)とも聞こえるのは東欧での活動が長かったためであろうか。(米合衆国に渡っても抜けてない。)とはいえ、音色はSKDのようにけばけばしくない。これを「耳に優しい」と肯定的に受け取るか、「メリハリに欠ける」と否定的に取るかは好みの範疇だろう(私は前者)。ちなみに、私は行ったことはないけれどサン・フランシスコはロス・アンヘレスとは対照的に落ち着いた町並みで、京都 vs 東京にも喩えられるという話だ。(ミシガンでの研修に学生を引率した際、USAの滞在経験が豊富な同行の英語の先生から聞いた。なお学生の希望により帰路はLAに立ち寄ったが、公共交通機関がほとんど皆無で車がないとどこにも行けないのは閉口した。)にもかかわらず、このオケは随分と現代的な響きがする。関係ないか。それはさておき、大音量でもうるさくならないのはありがたいと思っていたところ、コーダでひっくり返った。大見得を切る。(18分21秒以降のホルンの咆吼が凄い!)それは旧盤も一緒だったが、少々セカセカ気味で興が削がれるところもあった。当盤ではその欠点が解消されたためスケール感は格段に増しているし、そこに至るまでのシミジミした味わいも本当に素晴らしい。
 中間楽章にケチの付けどころはなく、終始見事な演奏を展開しているが、これといって特筆したいこともなし。(第3楽章は新旧演奏で好みがかなり分かれるだろうか?)そこで思い切ってすっ飛ばす。終楽章冒頭はブルックナー・リズムのしゃくり方が旧盤よりも控え目だし、大爆発も思いの外おとなしい。その点では第1楽章も同じだったことを思い出す。ならば、ということで予想した通りコーダではやってくれた。最後の20秒余りのブラスの凄まじい鳴りっぷりといったら! これほどまでに第1楽章第1主題の回帰が際立った演奏というのは他に思い付かない。これまで私は遅めのテンポによるベルリン・フィルの演奏(カラヤン70年盤、テンシュテット盤、ムーティ盤)を「豪華絢爛」と評してきたはずだが、当盤はその点で一歩(=響きが重々しくない分だけ)先を行くとともに、構成力によって見事にそれを引き出したザンデルリンク盤と肩を並べているという印象である。
 このようにブロムシュテットは当盤で大化けを見せてくれた、それも同曲では90年NDR盤から98年BPO盤にかけて大進化したヴァントにも匹敵するほどに、と思っているのだが、果たしてそれは私だけだろうか? SKD時代のブロムシュテットについて「名指揮者だと誤解されてしまった」と書いていた許光俊がどう思っているか知りたいところだ。(この結び前に使ったかな?)

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