交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
ダニエル・バレンボイム指揮シカゴ交響楽団
72/11
Deutsche Grammophon 289 453 100-2

 シカゴ響だからある程度覚悟はしていたが、それでも初めて聴いた時はあまりの喧しさに驚いてしまった。第1楽章冒頭の「ドーソーファミレド」よりも「ドミーソーラシド」(1分58秒)の方がデカい。ショルティ盤と同じだ。いや、録音は当盤の方が先だから、これはシカゴ響の伝統なのか、あるいは9年後に録音したショルティがバレンボイムの解釈をそのまま採用したのか。どちらかは判らないが、派手派手であることには変わりがない。というより、その点では当盤が上回っているのではないだろうか? ブラインドで聴いたらショルティ盤と答えてしまう人間は決して少なくないだろう。(当盤のティンパニは少々引っ込み気味であり、弾力性の感じられる音で出しゃばってくるショルティ盤と辛うじて区別できる。とはいえ、これも録音スタッフと機材の違いだけかもしれない。)曲想が変わる前の激しい加速はもちろん、中間部コラールでティンパニ付加を採用していることから、ここでもバレンボイムはフルトヴェングラーのスタイルを踏襲していると考えられるが、そんなことをすっかり忘れてしまったほどの豪華絢爛演奏である。
 第2楽章は水と油っぽいが、このけばけばしい音色で奏でられるスケルツォは迫力満点で、ブルックナーというよりはワーグナーが作曲しそうな、そして狩よりも騎馬戦の場面にピッタリの音楽と聞こえる。既に他ページに書いたように、第1稿のスケルツォは音楽としてはブルックナーが書いた中で最低レベルだと思うが、2稿のそれもブルックナーらしさが感じられないという理由で私はあまり好きではない。しかし、ここまで突き抜けてしまったらもう何も言うことはない。御本尊に倣って下手に改訂版を取り入れてくれなくて本当に良かった。
 終楽章も冒頭からテンション全開で、2分08秒からは拷問かと言いたくなるほどのメタリック責めである。ここまでやったのならシンバルも加えて欲しかった。ジュリーニの9番録音(76年)もメタリックながらここまで金ピカではなかったから、当盤のド派手演奏をシカゴ響の特徴として片づけることはできない。「イっちゃった演奏家」「変わった指揮者としか言いようがない」などとして、とかくショルティの名が挙げられることが多いようにも思うが、この時代のバレンボイムも相当なものである。何にせよ、アンサンブルに乱れはないし、騒がしいものの汚い音が聞こえたりするところもない。ほどよい残響を含む録音も非常に優秀である。このようにクレームを付けるところが見当たらないので、残っているのは好き嫌いの問題だけであるが、既にお察しのように私はこういうのも大好きである。

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