交響曲第5番変ロ長調
朝比奈隆指揮新日本フィルハーモニー交響楽団
92/09/02
fontec FOCD-9062

 当サイトでは正式略称として使われているか否かを考えず、国内オケはとりあえず英名表記の頭文字をそのまんまURLに使っている。よって、"Tokyo Symphony Oechestra" は "tso" 、"New Japan Philharmonic" は "njp" である。ならば日本フィルは "npo" かと期待したのだが、"Nippon (あるいはNihon)Philharmonic Orchestra" ではなく "Japan Philharmony" で残念であった。(←何が?) 略称が "NPO" では拙いのかもしれないが、"JP" というのも紛らわしい。今のところ、同オケの演奏によるディスク単独ページはないので問題なしだが。(ついでだが、名古屋空港は "NGO" である。出張時にはいつも苦笑していたが、特に海外で勘違いされたということはない。)
 と、どうでもいい書き出しをしてしまったが、当サイトの単体ディスク評ページとしては唯一、新日本フィルによる演奏である。5番の大フィル94年盤は、全体的に世評が高いキャニオン全集中でも例外的に完成度が低いとされるし、浅岡弘和も同全集収録の演奏を「朝比奈隆のブルックナーのベストかベストと同格」としながらも、「5番、7番を除くと」という但し書きを付けている。(自分勝手かもしれないが、「7番には他にもっと優れた演奏が存在するが、5番は出来がもう一つ」というニュアンスを読みとってしまった。)そこで、同レーベルからやはり廉価盤として発売されていた(そしてネット評も上だった)95年東響盤の購入を検討していたところ 、ヤフオクに当盤が出品され無競争落札できてしまった。キャニオン盤2種は2枚組だが、トータルタイムは80分をちょっと超える程度なので、79分09秒の当盤とそんなに変わらない。ディスク交換の手間が省けるのはありがたいというものである。
 当盤はネット評も高いが、「クラシック名盤&裏名盤リスト」でも吉田真が本命に挙げている。「手練手管を一切排して、細部を積み上げ、全曲を構造物のように構築していく現在の朝比奈にとって、定評あるブルックナーの交響曲のなかでも、第8や第9以上に、最大の成果を収めた曲といっていいだろう」と最大級の賛辞を送っていた。(「朝比奈が『構造』だってぇ?ふざけんなよぉ!」と眉をひそめる評論家の表情が目に浮かぶが、ここでは措く。)また吉田は、金管を倍に増強した朝比奈の終楽章コーダについても触れ、「(マイクでは収録できていないのは当然としても)「CDで聴くことのできる最高のコーダであることは確か」と当盤を評している。確かに間延びしてスカスカになってしまった80年の都響盤よりはるかに音密度が高くなっており、聴後の充実感がまるで違う。終楽章のトラックタイムは27分台から24分台へと大幅に減少しており、贅肉を落としてスッキリした演奏といってもいいだろう。旧盤もそれ以外では特に大きな問題がなかっただけに、12年の間に円熟味を増した当盤の完成度が一段も二段も上回っているのは何の不思議もない。
 第1楽章冒頭の遅い序奏とファンファーレ→速い2分07〜32秒→遅いファンファーレというテンポ設定など、指揮者の「解釈」に全く疑問を感じない訳ではないが(挙げていったらキリがないが)、この曲は既に述べてきたように「耐震構造」のしっかりしている曲なので、「ブロック間のテンポの関係に整合性がどうのこうの」などとムツカシイことを考えて聴かなければ大丈夫である。(さすがにフルトヴェングラーのようなムチャなテンポいじりは別だが・・・・・とはいえ、あれは面白さ抜群という点ではクナ盤と双璧をなす。)

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