交響曲第8番ハ短調
ヘルマン・アーベントロート指揮ライプツィヒ放送交響楽団
49/09/28
ARIOSO ARI 108

 アーベントロートの国内ファンサイトによれば、Tahra盤とMusic&Arts盤は同一演奏にもかかわらず後者の方がピッチが高いため1枚に収まっている(それに続き「手軽に聴きたいならこちらだ…って、そういう問題じゃねぇだろ」というコメントが来る)ということであったが、英語版ディスコグラフィサイトに載っている当ARIOSO盤のトータルタイムは前者と全く同じである。嫌な予感を抱きつつ私は再生に臨んだが、果たして低ピッチ攻撃にダウンしてしまった。これは5番以上に酷い! ハ長調部分では冗談抜きに吐き気を催してしまった。直ぐさま修正(手法は5番ページ参照)を試みたのは言うまでもない。例によって時間を示すと、第1楽章,16:11→15:24;第2楽章,14:17→13:36;第3楽章,28:42→27:18;第4楽章,23:13→22:06であり、トータルタイム(82:28→78:24)はM&A盤(78分11秒)とかなり近くなった。結果的に2枚(DISC3と4)に分かれていたものが1枚に収まることになったが、これで間違いなく本来のピッチに近づいたと断言できる。修正など真っ平御免という方にはTahraやARIOSOは全くお薦めできない。(入手困難かもしれないが迷わずM&A盤を買われるべき。)
 時にヒスノイズが耳に付いたかと思えば引っ込んだりするため、ヘッドフォンで聴くと少々気になる。もしかすると複数のテープから「ええとこ取り」をしたのかもしれない。まあ録音年代を考えたら音質はまずまずといえるだろう。元々なのか付加されたのかは不明だが程よい残響のため音が痩せていると聞こえないのが何といってもありがたい。演奏は5番以上に真っ当である。5番国内盤の解説にて小石忠男は「どの部分にも歌うために最適のテンポが設定され、それが音楽的な推進力を基本においている」と書いていたが、それは当盤の演奏にもピッタリ当てはまると思う。8番は少しぐらいは暴れても何とかなってしまう曲なのであるが、それを良いことに無茶なテンポいじりを乱発してイケイケ演奏に堕してしまわないのは流石である。時に足を速めることはあっても(例えば第3楽章のピークに向かう途中の2箇所)、要所では必ず腰を落としているため安定感が生まれるのである。やっぱブルックナーを解ってるわ、この人。少し古い時代の録音としてはクナの陰に隠れてしまっているような感もあるが、何せあちらは版がアレだから原典版による8番演奏としてはもっと注目されてもいいと思う。(やはりハース版使用はポイントが高い。ついでながら同じオケを振ったケーゲルもハース版だったし、当盤のタイムを正当なものと仮定するならば彼のスタジオ&ライヴ録音が共にトータル78分台だったというのも面白い。)モノラルとしてはトップクラスではないかという気もする。フルヴェン(54年盤除く)やワルターはそれこそ荒れ狂っているだけとも聞こえるし。あるいは「Kという男」の44年盤なら対抗できるかもしれないとも思ったが、何せ頭(第1楽章)なしなので買う気が起きん。試験的にステレオで録音されたという終楽章の音質には興味があるのだが・・・・

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