交響曲第7番ホ長調
ヘルマン・アーベントロート指揮ライプツィヒ放送交響楽団
56/02/16〜17
ARIOSO ARI 108

 アーベントロートのファンサイト(何となく美味しそうな名前)には、8番とともにTahra2枚組(TAH 114/115)に収録されている7番について「信じられないほど音が良い。ほんとに信じられない。滑らかな音色が、この曲の魅力に適している。」という魅惑的なコメントが出ている。よって比較的音質良好という予想は付いたものの、(Deutsche Schallplatten所有の音源ではなかったためか)徳間ではなくTahraから発売されていた(しかも2枚組としては結構高価だった)ため躊躇していたのであるが、それら2曲(同一演奏)がこの廉価4枚組に収められていると知ったため、"ARIOSO"という耳に馴染みのないレーベル名にもかかわらず購入に踏み切った。要はダメ元だった訳だが、「音が良い」は本当だった。(収録曲中では最も新しい録音だから当然かもしれないが。)ヒスノイズなし。残響付加なし。そしてピッチの修正の必要なし。ただし終楽章10分50秒過ぎにテープ損傷と思われる歪みを確認した。他にもあるかもしれない。
 5番や8番が歌うような演奏ではあっても絶妙なテンポ設定によって節度を失っていなかったため、この7番も全く心配していなかった訳だが、期待していた以上に素晴らしい演奏を聴かせてもらった。第1楽章5分手前での「大根加速」など、この指揮者にとっては論外だったのであろう。その代わり5分19秒から節回しを付ける。こういうのは初めて聴いたが品位は保たれている。6分過ぎの「パーパカパッパカパッパカパー」をサラッと流すのも予想通り。弦を小気味よく(短めに)弾かせているため速い部分では躍動感が際立ってくるが、逆に8分台のように遅くなる部分ではかなり粘っており、その対比がとても印象的である。(ここでもチェロには思い切り歌わせている。)テンポをブロックごとに大胆に変えるため、本来なら「異色演奏」(それも度を過ぎれば「ダメ演奏」)のレッテルを貼りたくなってしまうはずであるが、オモロイと思っている内に19分が経ってしまうのだから、こういうのを名人芸というのだろう。スタスタでもノロノロでもないテンポをコーダに設定し、そのまま楽章を締め括る。指揮者がバランス感覚を備えている証拠である。
 アダージョも見事である。アッサリ進むようでいて所々の(もちろん節度を忘れない)「歌わせ方」によって決してつまらない演奏とは聞こえない。直線的なシューリヒトとは少し違うけれども、何とも滋味溢れるものになっているのは同じだ。このような演奏にもちろん「ジャーン」は似合わない。(正直なところティンパニも要らない。)スケルツォはちょっと驚いた。脱兎のように駆け出すが1分22秒で急ブレーキをかけ、2分過ぎから再度ダッシュ(再現部も同じ)。聞き流してしまうことの多い楽章だから面白くやってもらう分には構わない、と言いたいところだが、いくら何でもこれは「邪道」だと思う。あのブラ1の「変態」の虫が騒ぎ出したのだろうか? と思わせておいて終楽章は真っ当に戻る(我に返る?)のだから訳が解らない。(8分35秒からの「雷鳴」にはビックリしたが、少なくともテンポ設定は「まとも」である。)何にせよ、モノラル録音による平板な音質という悪条件にもかかわらず退屈しないという点でクナにも肩を並べ得る名演奏だと思う。(フルヴェンも悪くないが時に「やりすぎ」と感じてしまうのが玉に瑕である。)

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