José Peixoto
Aceno
2003
Zona Música ZM00119
(ただしパイシュが歌うトラック4と8のみダウンロード購入)

José Peixoto - Filipa Pais
Estrela
2004
Zona Música ZM00153
(ただしダウンロード購入)

 "A Porta do Mundo" 評ページに追記した通りの脊髄反射的ダウンロード購入である。先にギター奏者と歌手の二重名義(ジャケットも2人の写真)となっている「星」の方から触れる。
 トラック1 "O que é que tu tens?" は「ドシラソファー、ファソラシシー」というギターのイントロで開始され、歌手もその音型をしばらく繰り返す。明らかにミニマルミュージックの手法だ。どことなくマドレデウスの近作に似ているのがあったように思った。ギターの音色もそれっぽい。ペイショートの作曲&演奏だから当然ともいえるが。だが実際に最も曲調が近かったのはロドリーゴ・レアン(創設時メンバー)の "Alma Mater" に収録されている"A casa" だった。それはともかく、休止によって歌は寸断され、パッとしないままに終わってしまった。
 次の "Sorrio Apenas" はさらによく解らない曲だ。クロノス・カルテットの"Winter Was Hard"(邦題「冬は厳しく 〜 弦楽四重奏曲の諸相 II」)にこんなのが入っていたような。これも現代音楽風である。調の特定が難しく、全くつかみどころのないメロディである。弦を弾く爪音もふんだんに採り入れた(故意?)ギターの合いの手が気味の悪さに輪を掛ける。最後の15秒で歌手がクスクス笑っている。参った。
 こんなのが延々と続くのかと思っていたが、続く "Dia da Tentação" は明るい曲でようやくホッとすることができた。ちょっと騒々しすぎて私好みではないが。4曲目 "Peixinhos e Bolas de Sab_o" はスローテンポの曲でようやく落ち着いて聴くことができる、と思ったのも途中まで。サビでメロディが迷走する。次の "Não digas que não te avisei" もハ長調の明快な曲でパイシュの "L'Amar" に入っていてもおかしくない。ただし0分53秒および1分03秒から半音階による下降音型が出てくると曲調は途端に不安定になる。ここまで聴けば、意図してこういう曲ばかりを採用していると思わざるを得ない。以降のトラックについても同じようなことしか書けないだろうから端折る。
 "A Porta do Mundo" のページで私は歌手の声の持ち味が影(あるいは陰)にあると述べたが、当盤収録の14曲はどれも最初から日当たりの悪い部分が多くを占めているような感じがする。ゆえにパイシュが歌えば陰りを通り越してくすんでしまう。「闇」というより「病み」という字を当てたくなるほどにも。やはり音楽自体が燦々と輝いていてこそ陰影の深さを堪能することができるというものだ。(例えば "Que o mundo é meu" のように。)早い話がコントラストを付けるには光量が不足している訳である。ギターの音色との相性も今ひとつという気がする。
 などと不満タラタラではあったが、やはりポルトガル語圏初の満点盤の後だから印象が劣ってしまうのはやむを得ない。ただし完成度は相当なものであり、こちらを先に聴いていたらそれなりに高く評価していたはずである。とりあえず80点。再評価も十分あり得る。
 続いて "Aceno" 収録の2曲について。トラック4 "Perto do poente (A visita da lua)" のグロテスクさは到底 "Estrela" 収録曲の及ぶところではない。揺れうごめくような2本のギターの作り出す不健康な雰囲気に終始支配されている。これではパイシュがどう頑張ったとしても持ち味を発揮できるはずがない。さらにトラック8 "Lua, que tens?" も不気味な導入部に続いて歌手が2分過ぎから「アアアアアー」と意味もなく喚いているだけ。30秒の試聴ではそこまで判らなかった。畜生カネ返せ!(←後の祭り。)

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