Elemental
2004(初発は1985)
Quinlan Road R2 76560

 当盤のネット評は結構多い。うち海外在住中に偶然聴いて魅了されたため帰国後CDを買ったというのが複数あったと記憶している。一方「気負いすぎ」というコメントも目にしたことがある。とはいえ、その執筆者も決して否定的ではなかった。デビュー盤は意欲が空回りするくらいで丁度いい。変に物の分かったようなアルバムしか作れないようでは大成(大化け)など望めまい。既に職場の自己紹介ページに書いているようにワインの熟成と一緒だ。私としてはボーナスのDVDも目当てではあったが、やはりマッケニットの原点を探る上では必聴だろうとの思いから当盤に白羽の矢を立てた。
 1曲目から先の「気負いすぎ」が実感できる。当盤に限っては「聴き疲れのする声」も当たっている。「フレーズの終わりはもう少し力抜いてくれんか?」とも言いたくなった。音色から使用楽器の全ては判別できないが、シンセを除けばアコースティックのようである。そういう素朴な伴奏と入れ込みすぎの歌唱とのアンバランスがちょっと可笑しい。といって声も器楽も特に難があるという訳ではない。要はシンプルな素材を集めているのにイマイチまとまりに欠けるということに尽きるのだろうか? 収録時間が約36分と短いが、似たり寄ったりのトラックがこれ以上続けばウンザリしてしまったかもしれない。変化球として加えたハープ独奏曲の "The Lark In The Clear Air"(トラック4)は悪くないが、次のデュエット "Carrighfergus" は男性ゲストの歌唱が凡庸であるため効果なし。最後の "Lullaby" に至ってようやく余分な力が抜けたようで、これが最も出来が良い。雷の効果音とおっさんのセリフは余計だが。
 執筆前はもうちょっと好意的な批評になるかと思っていたが、これでは高得点は望むべくもない。(将来の値上がりを期待しての)「先物買い」はリアルタイムでこそ意味がある。後出しジャンケンはダメ! ということで70点がやっと。

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