La Negra
1999
Universal Music (mercury) 546 470-2
当盤に収録された16曲の発表年は1969〜1998年まで実に29年にわたっている。要はベスト盤である。(なお通販サイト2社が当盤を92年リリースとしているが、そうなるとトラック10 "Viejo corazón" は再発時に追加されたのだろうか?)
アルゼンチンのフォルクローレを採り上げることで歌手としての経歴を始めたソーサであるが、広範なラテンアメリカ音楽を歌うようになってからの知名度は日本も含め世界的にまで拡大することとなった。ただし、リアル知人H氏には「商業主義に堕している」という辛辣な評価しか下せないようである。しかしながら、私にはいつ頃からそうなったのかが正直なところよく判らない。特に堕落していると感じたような音楽は聞かれなかったからである。(ちなみにja.wikipedia.orgには「15歳の時にラジオ局のコンテストに優勝して二ヶ月の出演契約を結ぶが、ディレクターがフォルクローレをバカにしたことに怒って喧嘩して帰ってきてしまった、というエピソードが知られている」とあるから、少なくとも活動初期には自国のフォルクローレに対する誇りとともに反骨心も相当に抱いていたことは想像に難くない。軍事独裁政権に睨まれて投獄、そして国外追放という憂き目に遭い、アルゼンチンが民政に復帰するまでフランスやスペインで過ごしたという話もそれを裏付けているように思われる。)少なくとも鑑賞に値するだけのレベルは保たれているから、既にこの時点で基準点(70点)は固いといえる。
1曲目 "Al jardín de la república" は楽器の使い方やリズムなどが有名曲 "Luna Tucumana" とソックリと聞こえたため、もしかするとAtahualpa Yupanquiが大作曲家&歌手らしくもない手抜き(二番煎じ)に走ったのかと疑ってしまった。実際には別人(Ramón Virgilio Carmona)の作だったし、よくよく考えてみれば何せ伝統音楽のことだから少しぐらい似てくることだってあるだろう。どうやらパクリではなさそうだ。
とはいったものの、既に歌手紹介ページに記したように当盤を購入した当時も特に感銘を受けたということはなかったし、超名曲をいくつも収めた "30 años" を聴いた後ではさらに印象が薄くなるのは避けられない。太鼓とギター、時に鍵盤楽器(ピアノもしくはチェンバロ)が参加する程度という伴奏は変化に乏しく、加えて同じような調子の曲がいつまでも続くから次第に飽きてくる。重複曲が先述の "Al jardín...." だけだから今すぐ手放そうとまでは思っていないが・・・・改めて試聴した結果、最も良かったのが11曲目 "Te recuerdo, Amanda" である。こもり気味の音質も手伝ってか、かつて耳にした「南米の中島みゆき」の片鱗が窺える。(実際にRAEで聴いた可能性もある。)それも結局は歌手の実力を評価してのことではない訳だが、加点対象として75点を付けておこう。
ソーサのページに戻る