ロス・イホス・デル・パラグアイ(Los Hijos del Paraguay)

Música Paraguaya (en castellano)
録音や制作の時期は一切不明
Producciones Fonográficas BCCD 5012

 もう20年近く前になるだろうか? 明石屋さんまが毎日放送(大阪)の「MBSヤングタウン」(22:00〜01:00)月曜日を担当していた時のこと、「桃太郎のコーナー」というのがあった。彼がタモリとビートたけしの両方に(あるいは彼をヤンタン土曜日司会の後継者に指名し、世に広く知られる切っ掛けを作った恩人といえる桂三枝にまで)「一生付いていきます」と言っていたとして「笑っていいとも」金曜日で「コウモリ」呼ばわりされていた頃である。こんなコーナーだった。出演者の1人、長江健次がハガキを読む。出だしは必ず「さんまさん、僕は(私は)さんまさんに一生付いていきます」で、次に「さんまさんのためなら」と来て、以下「たとえ日の中水の中」的な内容が続くのである。さんまの気に入ったら「ごうかーく!」の掛け声が飛んで賞品(番組グッズ)が貰える。当初は本当に困難を極めるようなことが書かれていたのだが、次第に受け狙いの投稿が増えるようになった。中にこんなのがあった。

 さんまさん、僕はさんまさんに一生付いていきます。
 さんまさんのためなら、僕はダークダックス、
 デュークエイセス、ボニージャックスのメンバーを
 ごちゃ混ぜにしてからもう一度分けてみせます。

これでスタジオは大爆笑。投稿者は一番良い賞品を得たのではなかったか? もちろん私にだって4×3=12人を正しく振り分けることは不可能である。
 さて、パラグアイ音楽とは無関係の枕を置いたようだが理由は一応ある。毎日のようにVCPのリクエスト番組を聴いていた私だが、実はLos Cumbreños、América Cuatro、そしてこのLos Hijos del Paraguayという3つの音楽集団の区別が一時期全く付いていなかったのだ。いずれも男性のみで構成されているためコーラスの響きでは判別できなかった。その内に各団体のレパートリーの違いによって、つまりクンブレーニョスが目次ページでも触れた "Cosechero" のようなシリアス路線まっしぐら、アメリカ・クアトロは人気曲 "Mitâ'i churi"(直訳すると「見捨てられた男の子」だが、意味は「手の付けられない悪戯っ子」ぐらいだろう)に代表されるようなコミカルな芸風、そして「パラグアイの息子たち」は両団体の中間的存在として自分なりに位置づけることができるようになった。
 そんな訳で悪く言えば中途半端ということになってしまうが、現に私のテープコレクションにてこのグループの演奏を改めて聴いたところ、面白さに欠けると感じてしまったのである。当盤にしても15曲(グアラニア9、ポルカ5、カンシオン1)入りでトータル48分だが、最も多いグアラニアは調性こそ変わってもテンポや歌い方はどれもこれも一緒なので飽きてくる。(サブタイトルに示されているように全て西語曲なのも単調と感じさせる一因か?)ここは何かひと捻りが欲しい。技術的には問題ないから70点は下らないけれど。
 ただし商品としては興味深い点がいくつかある。まずケースを開けると目に飛び込んでくるのが肌を露わにした若い女性の写真4枚。うちトップレスの1点は長髪で胸を隠すという少々際どいものである。もちろん中身の音楽とは何ら関係がない。(一方、中を開いても真っ白けで演奏者や曲目については何の記載もない。)既に述べたように彼の国では屋外でも店内でもCDに包装はなく試聴は自由なので、もしかするとこのような写真から何かを期待した客がついつい買ってしまうことを狙ったのだろうか? CDのレーベル面もなかなかにユニークだ。上方に "Indústria Brasileira"(アクセント記号が付いているからポルトガル語と思われ)、下方には "Made in Canada" とある。どっちなんや? ちなみにケース裏にはアパリシオ・ゴンサーレスのアルパCDと同じく "Producción: Aníbal Riveros" と記されている。どうやらコイツも海賊盤の製造・販売の元締めの一人に違いない。もちろんこれは悪い冗談だが、こんなところでいくら笑いを取っても加点の対象にはならない。
 などと好き放題に書き散らしてしまった感があるが、ソロの甘い歌声はなかなかに魅力的だし、コーラスも器楽合奏もよく揃っている。物足りなさを覚えたのはあくまで私の勝手であり、今回採り上げた中でパラグアイ音楽の入門用としては最適かもしれない。(ちなみに、こんな感じの音楽です。)

おまけ
 男性グループということなら、ロス・パラグアージョス(Los Paraguayos)またはロス・トレス・パラグアージョス(Los Tres Paraguayos)はわが国でも比較的有名かもしれない。ただしチャコ在住中にはその名前を耳にした記憶がない。帰国後にCDジャーナルに出ていたベスト盤のリリース情報によって初めて知った。早速予約注文して入手したのだが、中身が「ベサメ・ムーチョ」や「南京豆売り」といったラテンのスタンダード・ナンバー集と判ってみれば、他国の超一流ミュージシャンと肩を並べるほどとは思えなかったため、JICA(国際協力事業団、現国際協力機構)の専門家としてパラグアイで半年過ごされた職場の同僚(年配の教授)に譲ってしまった。パ国音楽中心のアルバムなら1枚は手元に置いておきたいのだが、通販サイトで検索しても今のところ入手可能な品は国内盤でも輸入盤でも存在しないようだ。

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