リッサ・ボガード(Lizza Bogado)

15 Años de Canto
1996
Ediciones Imperial CDLB 00498

 ボガードの歌はVCPでしょっちゅう聴いていた。最初に耳を引いたのは当盤のトラック1 "Yo soy la morena" である。(オフィシャルサイト掲載のディスコグラフィによると1981年発売のファーストアルバムのタイトル曲としてA面のトラック1に収録されている。)声の張りと伸びは共に申し分なく、他の歌手と比べて頭一つ以上抜けている感じだった。首都に滞在していた時のこと、彼女の歌がFMから流れてきた。当然ながら音質はチャコの中波放送よりも格段に良好である。「こんなに鮮烈な歌声だったとは」と衝撃を受けた。そして、ますます好きになった。2000年のパラグアイ再訪時にCDを求めたのは言うまでもない。ちなみに、以前H氏からもらった "Recuerdos" と題するカセットテープとほぼ同内容ながら曲順はかなり異なっており、収録曲数も当盤の方が多い(16曲で43分15秒)。残念なのは一番のお気に入りだった "Adiós, che parahe kue" が入っていないこと。("parahe" が辞書に載っていないのであくまで想像だが、「さようなら、あの麗しき日々よ」ぐらいの意味だろうか?)テープのコレクションとしては所有しているのだが、録音した日は運悪く遠方で雷雲が発生していたようで、微かながら繰り返しノイズが混入している。他にもう1曲、とっても素敵なスローバラードを聴いたことがあるが、それも録りたかった。(あるいは当盤3曲目の "Che pykasumi" のような気もするが自信なし。なお、ここでも "pykasu" が鳩の一種ということで意味不明ながら、たぶん「私の愛しい人」のことを歌っていると思われる。)
 何にしても名唱揃いなので特に書き加えることもない。が、最大の聴き所として10曲目 "Recuerdos de Ypakcarai" と次の "India" の有名曲揃い踏みを挙げておこう。どちらも絶品である。(ここで前者について余談を3つばかし。「思い出」がディスクによって単数だったり当盤のように複数扱いだったりするのは何故だろう? どっちでもいいからハッキリして欲しい。また、ボガードは1番をグアラニ語、2番を西語で歌っているが、このスタイルは私の知る限り彼女だけ(西語のみでサビのみ反復が一般的)である。グアラニ語の歌詞は後付けゆえ未だ十分普及していないということだろうか? ちなみにH氏もこのグアラニ語バージョンを絶讃していた。)今に至るまでこれらを彼女以上に見事に歌い上げた歌手あるいは団体を私は知らない。何を歌わせても見事なボガードだが、ラス前に位置するグアラニア2曲("Mi patria soñada" および "V'ya y jave")も秀逸だったから、強いていえばスローテンポの曲で魅力を最大限に発揮するということになろう。
 最終曲の "La reina de ñanduti" には唯一ダメ出ししたい。調性(ハ長調)と曲の造りが "Yo soy la morena" とクリソツながらメロディはまるで魅力に乏しい。作曲者が同じゆえ「柳の下の泥鰌」的駄曲ということになるが、これで1点引かざるを得ない。それでも今回の企画で採り上げた中では最高得点となる89点をマークした。

おまけ
 ボガードが2002年2月15日に米合衆国(Washington, DC)のThe John F. Kennedy Center for the Performing Artsで行ったコンサートの映像が同センターのサイトで公開されている。(公用語の西語とグアラニ語はもちろん、英語も器用に操っていたのに感心した。)彼女の歌を聴いてみたいという方はこちらへ。

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