Puntos Cardinales
1997
BMG LATIN 74321 50225 2

 当盤のリリース情報はEugenio Serranoという人物が運営するサイト(いつの間にかURLが変更となったらしく、現在は www.rockmusic.org/mecano)から得た。そこでは発売前から "A contratiempo"(同時にシングルカットもされた)が全曲試聴可能で、それを再生しながら入手を待ちわびていたことを思い出す。けれども、既にメカーノ紹介ページに書いたように結局は手放すことになった。要はメカーノの "20 Grandes Canciones" と同じく現物がない訳だから、トローハのソロアルバムについては彼女のサイトwww.anatorroja.com(こちらも公式 or 個人は不明、一方www.anatorroja.netの方はファンサイトと思われる)掲載のディスコグラフィを参照することにした。(ちなみに私が買った2枚は廃盤ながら「尼損」では出てくる。ただし西語ゆえ曲名が文字化けしている。)
 ところが、1曲目のタイトル曲 "Puntos cardinales" から既にどんなんだったか思い出せないのである。(試聴できないものかといろいろ当たってみたが無駄だった。)何という体たらく。先述した "A contratiempo"(5曲目)は、もちろんメロディがスラスラと出てくるが・・・・次の "Como tú" も続けてよく聴いたから憶えている。サンバ調で、しっとりした感じの前曲とのコントラストが面白かった。あとはラストの "Deja que llueva"(八代亜紀「雨の慕情」の西語版?)、「雨よ私の涙を洗い流しておくれ」(歌詞がホンマにそうなのかは知らん)とばかりに別れの哀しみをサラッと歌い上げているのが素晴らしく、一番気に入ったのはこれかもしれない。ということで、コメントできたのが僅かに3曲とは我ながら情けない。
 ここで "A Contratiempo" に戻るが、先述したようにメロディは親しみやすいし、決して悪い曲ではない。ところが冗長感がどうにも否めないのだ。2コーラス半でトラックタイム4分38秒だが、最後のリフレインに入る前に「もおええわ」という気になってしまった。"Descanso Dominical" 収録の "Mujer contra mujer" や "Dalí" は5分台だが、決してそんなことはない。となれば音楽の密度が小さいということに尽きるのだろう。また、当盤に収録された全ての曲は別にトローハが歌わなくても構わないようなものばかり。そういう印象を抱いたことは何故かしっかりと記憶に残っている。
 そんな訳であまり気は進まないのだが一応採点しておく。歌唱は90点ながら曲は50点。よって間を取って70点としておく。(←乱暴な奴っちゃなあ。)

Pasajes de un Sueño
1999
BMG 74321 72969 2

 こちらの1曲目はしっかり憶えている。といっても良くない意味で。"Al sur" のチャカチャカしたイントロを聴いただけで私は嫌気がさしてしまった。そして前作と同様、トローハの声の魅力を生かし切れていないように感じた曲が大部分だった。(入手が後だけには少しは思い出せるものの、それでもせいぜい半分である。)その典型がラップ調の3曲目 "Ya no te quiero" である。トラック13にボーナスとして加えられたビデオクリップ付きバージョンも全く意味不明だった。唯一の例外はラス前(CD本編としては末尾)に置かれた "Una canción de amor" である。これは名曲。ただし「是が非でも彼女でなければならぬ」という必然性には乏しい。
 このままでは埒があかないので、かつてKさんに送ったメールを引っ張り出してみる。

  アナについてばっかりばっかり書きましたが、メカーノは他の2人のメン
 バー、ホセ・マリア(愛称ホセ)とイグナシオ(愛称ナチョ)のカーノ兄弟
 の存在を抜きには絶対に語ることができません。(アルバムでは彼らの曲が
 ほぼ交互に並んでいます。)彼らの作曲の腕前は、マドレデウスのペドロや
 ロドリーゴにも決して引けを取らないと思っています。メロディは単純で覚
 えやすいものがほとんどですが、それに色を付ける、つまりオーケストレー
 ションの技術が素晴らしいのです。シンセサイザーが生み出す様々な音色を、
 多重録音を駆使して盛り込んでいます。例えば「スペインの玩具箱」の1曲
 目の「エル・シネ」は大部分が同じメロディの繰り返しなのですが、楽器と
 それに別テイクのアナの声が重なってきて、次第に盛り上がります。演奏効
 果が見事に計算されています。「魔術師」のラヴェルやR・コルサコフに匹
 敵するとまで思ってしまう位です。
                (中略)
  こんな風に書いていくとキリがないのでもう止めますが、メカーノは3人
 揃って初めてメカーノだということが言いたかったのです。「アイダライ」
 以降は、3人ともソロ活動を始めましたが、アナ(この人は声がまだ衰えて
 いない)の初のソロアルバム("Puntos Cardinales")は凡庸な音楽とのバラ
 ンスが取れておらずガッカリでしたし、カーノ兄弟は時にバックコーラスで
 加わる時の声から判断する限り、歌に魅力を感じることはまずあり得ないの
 で聴く気にはなりません。              (00/01/15)

改めて目を通しても「そうやなあ」である。上でも触れているように、トローハの希有な声と渡り合うことのできる音楽はそうはない。(一方、カーノ兄弟の音楽を歌いこなせる歌手もそうざらにはいないだろう。彼らの自作自演は私が聴いた限りにおいて「論外」と判断せざるを得ない。"Descanso Dominical" のページで槍玉に挙げたFeyなど「論外中の論外」である。ちなみに、メカーノやトローハ関係のBBSにて "FEY ES UNA BASURA" などと "basura musical" 呼ばわりする非難囂々派と擁護派の間で泥仕合が行われているのを見た。)そして、このアルバムも残念ながらその条件を満たしていない。ということで、やっぱり70点が関の山である。ところで括弧内に入れた「この人は声がまだ衰えていない」だが、当盤録音年にトローハは40歳を迎えていたはずだからまさに驚きの一言である。最近のアルバムを通販サイトで試聴してもその気配すら感じられない。こうなると不気味ですらある。容姿の方はいくらでも誤魔化しが利くだろうが、声はそうはいかないはずだ。何か若さを保つ秘訣でもあるのだろうか?
 なお、この後トローハは旧作抜粋に一部仏語版を加えた "Ana Torroja" を2001年、さらにオリジナルアルバム "Frágil" を2003年に発表している。が、お察しの通り私がそれらに手を伸ばす可能性は極めて低い。実は今年(2006月)春の東京出張時に後者を渋谷のレコファンで見つけたが見送ってしまった。激安なら展開は違っていたはずだが・・・・

おまけ
 あるメカーノのファンサイト(国内)にて、トローハがフランスの2人組Deep Forestのアルバムにゲスト参加しているという情報を得た。彼らの第3作 "COMPARSA"の最後の曲(トラック13)"Media luna" にてシリア人歌手Abed Azriとデュエットしているとのこと。アマゾン通販で検索したらすぐ見つかったが、驚いたのは価格。UK輸入盤のページには「16新品/ユーズド価格: ¥ 1より」とある。出品していたのはイーブックオフ アマゾン店である。(そんな値段で商売になるのか疑問を感じずにはいられなかったが、Kさんによると「送料がかかるからまともな値では売れないんですよね」とのことであった。ちなみに私が買った後も同じ品が相変わらず1円で数点売りに出されている。)
 注文後間もなくCD(Sony Music Entertainment (France), SAN 488725-2)が届いた。冒頭から再生する。「深い森」というのはマダガスカルの森林らしく、ディスクの売り上げを通してその保全活動に貢献しているようだ。これまでも世界各地の音楽を題材としてきたそうで、 "COMPARSA" では「ラテン」がテーマとのこと。しかしながら、流れてきたのはどう聴いてもアフリカ音楽である。(タイトル曲はドミニカ共和国のメレンゲだし、他にもそれっぽいのが何曲かあるにはあったが。)何語で歌われているかすら判らない曲が大多数。音楽の質は決して低くはないのだろうが、リズムがやたらと前に出る音楽は全く私の好みではない。(ちなみにベスト盤についてだが、amazon.co.jpに「子供だましではないか」と題するレビューが載っていた。一部抜粋するが全く同感である。「メロディーラインやリズムの織り込み方がいかにもありきたりでつまらないと思いました」「目先の器用な人間がここらへんをつついたら受けるんではないか?と企画、成功した物ではないでしょうか?」ただし「BGMにしては気が利いているという程度の作品だと思いました」には異を唱えたい。チャカチャカが耳障りでBGMとしても失格である。)
 さて、お目当ての「半月」だが、短いイントロに続いてオッサンが低い声でボソボソと歌う。何とも不気味だ。トローハが登場するのはようやく2分を過ぎてから。だが曲調は変わらない。バックの「ズンズンチャッチャズンズンチャ」という打楽器リズムが煩わしいこと甚だしい。これでは彼女の持ち味(美声)が完全に死んでしまっている。大ガッカリ(10点)。通販サイトではどこもかしこも冒頭部分しか試聴できなかったのが不運だった。こんなんだと知ってたら絶対買わなかったのに。結局「安物買いの銭失い」となった。(配送料・手数料の340円が痛い。)

おまけ2
 本文終わりで触れた "Frágil" であるが、上記Deep Forestの片割れがプロデュースしているというトホホな情報を得た。手を出さなくて正解だった。

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