Luna
1993
Sony LATIN CDT-81152/2-470828

 当盤もブックレット表紙がようわからん。下弦の月を見上げているガブリエルは布を巻いて髪を隠している。思わず三浦敏和(タカアンドトシの坊主の方)の口調で「尼さんか!」とツッコミを入れつつ歌手の頭をパシッとはたきたくなった。(いないけど。)ちなみに裏表紙の方はなぜか満月で歌手は目を瞑っている。こちらはかなり幻想的だ。
 前年リリースの "Silueta" 同様のポップス集ながら器楽編成が小さくなっている感じ。そのためか冒頭の "Tu nombre ts traición" から落ち着いた気分で聴くことができた。本作もトラック2がなかなかに素晴らしい。タイトル曲の "Luna" である。弦楽によるイントロから既に高級感が漂っているが、ガブリエルの歌唱も非常に情熱的ながら格調は最後まで保ち続けている。惜しまれるのが途中から加わり次第に出しゃばりの度を強めていくドラムスだ。(ところで当盤収録13トラック中で例外的にこの曲のみクレジットに彼女の名前がない。代わって名を連ねているのがPandoraのページでも触れたヒットメーカーのJuan Gabrielだが、Anaとはどういう関係にあるのだろうか? もしかすると知らないのはとっても恥ずかしいことだったりして。)
 当盤で最も気に入ったのは自分でも意外なことにサンバの "Estas emociones"(トラック4)である。出だしの打楽器オンパレードには耳を塞ぎたくなったが、いざ歌が始まってみれば聴き心地は非常に良く、次第に気分が乗ってくる。ハスキーな声との相性が良いのだろうか? やはりリズム全開音楽の "Pecado original"(ベスト盤に収録)あたりは辟易のし通しだったというのに・・・・不思議だ。(そういえば、私的には凡作だったAna Torrojaのソロデビュー盤 "Puntos Cardinales" でも歌手の芸風には合わないだろうとの先入観を持っていた同種の "Como tú" は結構聴けた。)とにかくガブリエルのジャンル適応力の大きさを示すには十分な出来映えといえる。ただしツンチャカ系の10曲目 "Vaya fin de semana" と12曲目の "Entre dos" は私にはちょっと辛い。
 ラストの "Es diferente" で共演しているYuriという歌手は初めて知ったけれども、HMV通販のバイオグラフィーに "Often called The Mexican Madonna" とあるからには、それなりの大物ということだろう。ただし、一本芯の通った声は悪くないものの大仰な歌い方には閉口させられた。まずまず健闘しているといったところか。(なのでアルバムを求めるようなことはない。)
 基本的には高水準の作品に仕上がっているため無難に90点(前作と同じ)を付けとこかと考えたが、先述の2曲に対する不満を思い出したので1点ずつ引いて88点としておく。

ガブリエルのページに戻る