Joyas de Dos Siglos
1995
Sony LATIN CDZ-81678/2-479892

 当盤もジャケットに楽器が描かれている。そのギター2本が中心で時にハーモニカなども加わるというシンプルな伴奏だが、お陰で彼女の歌声がストレートに心に響く。お察しのように評価は "The Best" よりは上である。ただし、"Mi México" のマリンバのようなプラスアルファもない。
 ランチェーラの伝承曲(一部作曲者不明)のみを扱っている。さすがに名曲揃いである。特に感銘を受けたのは2曲目の "Un viejo amor" だが、どこかで聴いたことがあるメロディだとしばし考え、El Consorcioが "Desde el Corazón de México" 収録の野外ライヴで歌っていたと思い当たった。ただし、向こうのタイトルは "Mi viejo amor" だったので確認に時間がかかった。それはさておき、"Mi México" にも決して引けを取らない熱唱が続くにもかかわらず、聴いているとダレてくるのである。クラシックでも特に大編成オーケストラによる豪華絢爛たる響きを愉しむ私ゆえ、伴奏があまりにも変化に乏しいと退屈してしまうのは避けられないのかもしれない。当盤はトータル47分弱という短時間収録が却ってありがたかった。完全に集中が切れる前にお目当ての "La barca de oro" を迎えることができるから。改めてジックリ聴いてもやはり素晴らしいものは素晴らしい。ところで、モセダーデスのバージョンでは "No volverán tus ojos a mirarme" であるのに対し、ガブリエルは "No volverán mis ojos a mirarte" と全く逆の立場で歌っているのが興味深い。(そういえばエリック・サティの ”Je te veux" やピエール・ルイギーの "La vie en rose" といったフランス歌曲も男性版と女性版で歌詞が微妙に違ってた。)どちらも置き去りにする側(男)のはずだが、この補語人称代名詞の違いが情感の込め方における少なからぬ差異の一因となっているのだろうか?
 最後は余計なことで字数を費やしてしまったが、(私の嗜好は措いといて)密度も完成度も高いアルバムであることは疑えないから90点としておく。フォークソング好きの人ならもっと高い点を付けるだろう。

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