>  CDジャーナル3月号に赤塚不二夫氏のインタビューが出ていましたが、
> そこに注目すべき発言がありました。以前私信で紹介した、ピアソラが師の
> ヒナステラから受けた人生で最も貴重なアドバイス「音楽を知るためには、
> 絵画も演劇も、文学も知らなくてはならぬ。」と通ずるものがあると思いまし
> た。売れる前のトキワ荘時代、手塚治虫氏が赤塚少年をはじめ石森章太郎や
> 藤子不二雄らに次のようなことを言ったのだそうです。
>
> 「もし、マンガ家になりたかったら一流の音楽を聴きなさい、
>  一流の映画を観なさい」
>
>  この言葉が漫画を描く上で大きな礎になったとして、赤塚氏は続けます。
>
> 「音楽や映画だけじゃない、なんでも一流だよ。そこから自分の世界を創れ
>  って。マンガからマンガを勉強してもオリジナルを追い越せない。だから
>  手塚先生の亜流っていないんだよ。」
>
>  赤塚氏らは一流の音楽というものが解らなかったのでレコード屋の店員に
> 尋ね、チャイコフスキーのピアノ協奏曲のLPを(トキワ荘の家賃が3000円
> だった時代に1600円もしたのでワリカンで)買い、それ以後も「クラシック
> にかけては評論家になれるほど聴いた」そうです。音楽や映画以外にも一流
> のものに触れるということで、SFやミステリーの本も買ったために金がい
> くらあっても足りず、食費を切り詰めていつも腹を空かせていたという話で
> した。「そんなこといまの若い子は絶対にしないだろうなあ」と氏は述べてい
> ましたが、僕は師の言葉に忠実に従った若き漫画家達の純真さに感動を覚え
> ました。
> (「夢へ邁進するためのストイック。モノが豊かになった今の時代では難しい
> ことだろう。身を削って知り得た“一流”があったからこそ、枠にとらわれ
> ない不世出のマンガ家は生まれたのである。」という聞き手のコメントも見事
> だと思いました。)
>  僕は一流のものを選んで鑑賞しているという自負はあるものの、それらか
> ら何かを吸収しようとする真摯な態度という点では、やはり当時の人々に完
> 全に負けていると思います。もちろん今の豊かな時代をありがたいとは思っ
> てはいるのですが、古き良き時代に対する羨ましさを抱かずにはいられませ
> ん。本や音楽ソフトが今の10倍の価格だったら、有り難みを噛みしめつつ、
> さらに深く味わうことができるのかもしれないな。

文面からはKさんに送ったメールと思われるが、そのつもりで送信簿をしらみつぶしに探したものの見つけることはできなかった。(ついウッカリして捨ててしまったのだろうか?)ようやくにして文書フォルダ内にWord書類(最終変更日は2000年2月23日)として保存していたのを発見した。気に入った話はなるべく残すようにしているのだが、それが役に立った。

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