Maria Rita(マリア・ヒタ)
Segundo
2005
Warner Music Brasil 256462675-2
エリス・レジーナ(母)のページ下の「おまけ」にて「クリソツ」を理由にスルーの意思表示をした私だが、早々に気が変わってしまった。新譜(&来日記念盤)"Samba Meu" のCDジャーナル評にあった「2作目にして早くも“10年に1枚”の名盤『segundo』(2005) を生み出し」とのコメントを目にしてジッとしていられなくなったのである。そこでネットショップをハシゴしてみたところ米尼で新品が安く売っていたため速攻入手。(ちなみに最新盤の方は私好みのジャンルでないため見送りの方針は変えない。)なお、歌手名は少し前なら「マリア・リタ」と表記されていたであろうが、どうも最近は原語による発音を尊重するという方針にシフトしているらしく、それはそれで喜ばしいことだ。ただし、HMV通販のデビュー盤 "Maria Rita" レビューに見られたようにElis Reginaまでも「エリス・ヘジーナ」と変えてしまうのはいかがなものだろう。既に「レジーナ」が十分すぎるほどに浸透しているのだから。
1曲目 "Caminho das águas" の歌の出だしを耳にして改めて「似てる似てる」と思った私だが、決して「劣化コピー」ではない。余計な予備知識(レジーナの声と歌い方)を持っていなければ、いや持っていたとしても十分な実力者と判るにさして時間は要さないはずだ。歌唱は力強く安定感も抜群。曲想のかなり異なる12トラックを完璧に歌いこなしている。(本質的なことではないが、当盤収録曲がどのジャンルに該当するのかは難しいところである。ロックでもポップスでもない。強いて押し込むならジャズだろうが、収まりが悪いという点では五十歩百歩である。甚だ不満ながら、やはり定義曖昧の「ワールド・ミュージック」しかないのかもしれん。)
とりわけ感銘を受けたのがディスク中盤(トラック4〜6)のアップテンポ曲3連発、すなわち"Mal intento"、"Ciranda do mundo" および "Minha alma (A paz que eu não quero)" である。いずれも最初は淡々と歌っているだけなのでドラムスのリズムが結構耳に煩わしかったりする。(とりわけメロディに抑揚のない "Mal intento" にはその傾向が著しい。)ところが次第にボルテージが上がってくるにつれ、当方もいつしかヒタの音楽世界に引きずり込まれている。後半の畳み掛けがこの人の最大の持ち味であると認識した。そういえば他ページにて「クラシックなら打楽器洪水も大歓迎」などと書いた私だが、今になって思い当たった。歌が打楽器や電気楽器に負けてしまっているからこそ、それらを邪魔と感じてしまうのだ。伴奏と渡り合えるだけの力量を備えた歌手というのは実はそれほど多くない。
ということで「10年に1枚」とまでは評価しないものの高水準の当盤に95点を与えても全然惜しくない。ただし "Mal intento" に違和感を覚えたことは看過できない。途中で「なんか変やなあ」と思いつつ聞き耳を立ててみたら意味がそれなりに取れたのである。でブックレットを開き、遅まきながら西語歌詞と知った。別に訛っている訳ではないが、最後まで字余り感が付きまとっていたのは惜しまれる。なので2点引いて93点。
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