Valéria Oliveira(ヴァレリア・オリヴェイラ)

Valéria
2001
Video Arts Music VACM-1175

  少し前にブラジル北部出身の女性歌手、ヴァレリア・オリヴェイラのアル
 バム『ヴァレリア』を買いました。CDジャーナルの新譜紹介で大きく取り
 上げられており、インタビュー記事にも興味を覚えたからです。が、期待は
 ずれでした。彼女の歌い方は伝説的ボサノヴァ歌手ナラ・レオン(脳腫瘍で
 夭折)のコピーであり、しかもナラより低い声域で歌われているために鮮明
 さが損なわれています。これでは「わざわざ買う必要はなし。」ネット上で
 は好意的な感想が大部分だっただけに残念です。ただし、バックバンドがジ
 ャズ的な編成であるという斬新さと、(ブラジル音楽の主流をなすリオやサ
 ンパウロとはかなり毛色の異なる)北部特有の要素がアレンジに採り入れら
 れているため、器楽の方は結構面白く聴くことができました。また、これま
 でテープでしか持っていなかったスタンダード曲の多くがCDで聴けるよう
 になったという点でコレクションとしては価値がありますので、全く無駄な
 出費という訳でもなかったのが救いです。
  ここで問題にしたいのは、ネットで検索した際に複数のCD店のサイトに
 てセールス・コピーとして使われていた「ミラクル・ヴォイス」という言葉
 です(個人サイトの感想はどうでもいいのですが)。ヴァレリアの声にボリ
 ューム感はありますが、常識の枠からは一歩も出ておらず、どこを探しても
 「奇跡」と呼べるような優れた点は見当たりません。(かつて「天使の(歌)
 声」も随分と使い回されましたが、同じく)「『奇跡』や『ミラクル』を濫
 用して価値を下落させるんじゃねぇ、ボケ!」と私は声を大にして言いたい。
 (と最後は暴言で締め括ってみました。)         (01/09/13)
 
この歌手については手抜き、つまりKさんへの私信の使い回しで済ますことにした。(なおナラ・レオンが亡くなったのは47歳の時であるから、まだ若かったとはいえ「夭折」を使うには遅すぎると今更ながら思った。)歌手の訪日に合わせて発売される新譜について音楽メディアはとかく大袈裟に書き立てる傾向があるということを当時の私は知らなかった。それが敗因である。
 この後もオリヴェイラは何枚かアルバムをリリースしている。それらは上々の仕上がりを示しているのかもしれないが、ここではあくまで当盤録音時点での実力を評価すべきである。上を再読するに、期待が裏切られたという無念によって不当に低く見積もってしまった感はある。が、それを排除したとしても70点が関の山であろう。

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