ジョーン・バエズ(Joan Baez)
2005年2〜3月のナミビア出張の帰路でのこと、私は中継地ヨハネスブルク空港内の免税店で土産物を物色していた。(南アは訪問しなかったのだが、同国の通貨ランドを手持ちにしていたためである。理由を述べる。地方では交換レートが悪いということでナミビアの首都ウィントフックの銀行で両替したところ、ナミビアドルに加えてランドの紙幣も手渡された。行員から1対1のレートで問題なく使用できると説明され、実際その通りだったのだが、アンゴラ国境に近い北部の任務地では全く通用せず、結局数千円分が残ってしまったのである。)ある店で民芸品を手に取っていた時に聞こえてきた音楽が耳に留まった。まるであの世(天国)から鳴り響いているかのごとく何とも魅惑的な調べである。そこで店員に「このCDは買えるのか?」と訊いた。しばらく待たされた挙げ句、今はストックがないとの返事。「なら今流しているのを売ってくれ」と食い下がったが、デモ用だからということで却下。やむなく帰国してから求めることにした。ところが気が付いてみれば、曲名を教えてもらわなかったので捜しようがない。ATOKの手書き入力のように音声によるメロディ検索でもできればいいのだが。(それでも音痴には無理か?)そんな訳でモヤモヤ気分のまま日数が経過した。ところが思わぬ形で解決がもたらされた。
ある日「A&M デジタル・リマスター・ベスト」シリーズによるサンドパイパーズ(The Sandpipers)のベスト盤(POCM-1574)を聞いていたところ、あのメロディが流れてきたのである。(ちなみに私はキューバの超名曲 "Guantanamera" を聴くためだけにそのディスクを買った。)それはトラック9に収められている "KUM-BA-YA" という曲だった。そこで早速各種サイトで検索を試みた。キーワードを "kumbaya" あるいは「クンバイヤ」に設定したらドドッと出てくる。私は(おそらくあの店で聴いたと思しき)アフリカ系女性歌手によるディスクが欲しかった。が、めぼしい品は見つからない。というのも、判ってみればこの曲は子守歌としても使われており、タイトルに "lullaby" という単語が入っているCDも多かったのだが、それらをiTunes Music Storeや通販サイトで試聴したところ、単調なアレンジが災いしてか平板にすぎると感じられたのである。(子供が歌っているのも結構あったが全て論外だった。)そんな中に聴き応えのあるものが1つだけあった。女性シンガーの透き通った声もそうだが、繰り返し入ってくる「クンバイヤー」の合唱が何とも感動的だったのである。(その時はバックコーラスなのかか聴衆なのかは定かでなかったが、心打たれたという点では既に他ページで触れたプロムス・ラストナイトの定番「威風堂々第1番」と一緒である。)本ページで採り上げるジョーン・バエズのアルバムにそれは収録されていた。
そうと判れば話は早い。今度は歌手名で調べてみた。ところが「クンバイヤ」を収めているのはキングレコードが発売したベスト盤のみであり、「ベスト・ヒッツ」(1994)にせよ「我が青春のジョーン・バエズ」(1998)にせよ、ことごとく廃盤となっていると知った。後に出たユニバーサル・ミュージックのCDには入っていない。そうなると必然的に輸入盤となる。さらに、この曲のスタジオ録音は存在しないということで、時間はかかったものの選択肢はライヴ音源を収めたディスクに絞られた。後は入手まで加速度的に進行する・・・・はずだった。
とりあえず私が欲しいのは "Kumbaya" 1曲のみである。ところが怪しからんことに国内のiTunes Storeでは試聴できない。当然ながらダウンロード購入も不可能。(比較的新しいディスクのみ数種扱っていた。)海外店では販売しているというのに・・・・それで仕方なくHMV通販のカートに入れておいた "Joan Baez in Concert" を注文することとなった。ただしマルチバイ割引狙いのため全ての品が揃うまで待たされた。(これは1962および63年に行われたコンサートから計20曲をピックアップしたアルバムである。他に初発LPと同じ形態、すなわち演奏年ごとに2枚に分けて収録された "In Concert I" および "In Concert II" も出ているが、もちろん私は興味が湧かなかった。)
このアルバムには英語(バエズの母国語)以外にもポルトガル語やイタリア語曲が収められているが、どれもなかなかに味のある歌唱を聴かせている。既にスペイン語でも歌っているのは知っていたから、続いてそれも聴いてみたくなった。最初は西語圏の音楽(14曲)のみで構成された "Gracias a la Vida" を視野に入れた。が、そうなると1人の歌手が西語圏の音楽とその他の地域の音楽とに分裂するという恐るべき事態にまで発展してしまう。それで残念ながら購入を断念。というのは大嘘で、実はタイトル曲および "Guantanamera" といった超有名曲も含め、試聴した全てのトラックから特にこれといった魅力が感じられなかったためである。(ここでHMVにクレームを付けておくと、このアルバムのマルチバイキャンペーン税込価格は1292円なのにダウンロード購入すると1500円もかかる。ちっとは考えろと言いたい。どっちにしても私はマカーなので利用できないが。さらにムカつくのがJavaScriptからMedia Playerを起動して再生するタイプの音声ファイル、つまり国内盤のトラックが一切試聴できないことである (別URLが指定されている輸入盤は大丈夫)。これには時に殺意すら覚える、というのは冗談だとしても、マックユーザをないがしろにするにも程があるというものだ。)そこで方針変更。西語曲は先の2曲のみで十分と判断し、代わって家畜語で歌われた彼女の代表曲を聴いてみようと思い立った。そうなると従うべきは「困った時はベスト盤」の格言(?)である。すなわち「ユニバーサル ミュージック:THE BEST 1200」シリーズの国内盤(UICY-9921)が候補に浮上した。ところが初回限定生産のため在庫切れ。(当初はそうではなかったはずだが、モタモタしているうちに姿を消してしまった。)やむなく同内容の輸入盤 "The Universal Masters Collection"(2000年)を注文。「24時間以内に発送」の品だったので直ちに入荷。例によってマルチバイ割引を利用したため、あとは同時注文品の入荷を待つばかりだった。ところがユニバーサルが今年(2007年)6月に「THE BEST 1000」(UICY-90948)として値下げ再発するという情報を得た。もちろん直ちに注文をキャンセルして生協のネットショッピングサイトに予約を入れた。これまで入手後に廉価盤が出て地団駄を踏むことが多かった私だが、珍しく目が良い方に出た。サイコー、サイコーだよ。(←何たるお調子者か!)
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