Homenaje a Violeta Parra
1991(オリジナルLPの発売は1971)
PolyGram (PHILIPS ARGENTINA) 818 332-2
トラック1 "Defensa de Violeta" は鍵盤楽器(エレクトーン?)の弾く "Gracias a la vida" をバックにソーサが追悼の詩(註)を朗読している。(註:作者Nicanor Parraは故人の兄らしい。)それなしに当盤は成立しえないのだろうが、5分近くにも及ぶため途中でウンザリしてくる。(ちなみに当盤の正味の演奏時間、つまりトラック2〜11の合計は34分ちょっとである。)だが、散々待たされた後に正真正銘の "Gracias a la vida" が始まると、やはり悲運の生涯を終えた原作者への憐憫の情を抱かずにはいられない。なお、ベスト盤 "30 Años" に採用された音源と同一であることを確認したが、こちらの方が収まりが良いのは言うまでもない。ここでパラのオリジナルとも比べてみると、あちらはボソボソ歌唱とチャランゴの切ない音色の相乗効果により終始身につまされるほどの寂寥感が漂っていたのに対し、当盤のギター伴奏および一歩引いたようなソーサの歌唱によるカヴァーには断然落ち着きがある。繰り返し聴きたいと思うのはやはりこちらだ。他にパラの遺作 "Las Últimas Composiciones" の収録曲で耳に馴染みがあった "Volcer a los 17" (トラック6)と "Rin del angelito"(同10)にしても概して同じ印象。ああいう超弩級のおとろしいディスクはそう滅多に再生するもんやないと改めて思った次第である。
当盤ではむしろ他の(少なくとも私が初めて聴くと思った)トラックの方が余計なことを考えなくて済む分、音楽にスッと入っていけたような気がする。そうしてみると、基本的にギターとパーカッションのみ(時に笛など)という質素な伴奏に乗せたソーサの歌唱は力強さに溢れており、純粋にフォルクローレのアルバムとして耳を傾けるならば、非常に充実した出来映えを示していることは明らかである。特にトラック7 "La carta" はQuilapayún(註)とのコラボレーションが素晴らしく、本作のベストといえる。(註:チリの男性グループと思われるが、詳細は不明である。ところでコーラスの響きは他ページで触れたArak Pachaとどことなく似ている。ロス・カルカスなどボリビアの音楽集団と比べれば随分と地味だが、キリッと引き締まっているように聞こえるのが耳に快い。)収録時間の短さと11曲目 "Los pueblos americanos" でアッサリ終わってしまうことが弱点といえば弱点か。"Mujeres Argentinas" と同点ながら88点。
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