アンパロ・サンディーノ(Amparo Sandino)

Punto de Partida
1996
Wea International 61939-2

 名古屋在住時代、定期的に足を運んでいた中古屋にて何気なく買った。(なお職場自室のiMacに入れると、しばらくの間アクセスを試みるものの吐き出してしまう。こういう品がたまにある。理由は判らないが全く困ったものだ。)コロンビア人女性歌手のデビュー盤である。ちなみに "Amparo" は“o”で終わっているが、例外的に女性名であるから注意されたし。(他にRosario、Soccoro、Rocío等もそうらしい。ついでながら当サイトに登場するリアル知人の奥さんと同じ名前である。)
 冒頭収録の "Mar de amores" のイントロからして随分と賑やかであるが、続くサンディーノの歌の出だしも節回しがやたらと大仰。それゆえ最初に聴いた時は「ハズレか?」との危惧を抱いたはずだが杞憂だった。以降の歌い方には節度があり、合唱(男女混声)との見事な掛け合いには拍手を送りたくなった。少し前に絶賛したグロリア・エステファンの "Oye mi canto" と同じく、チャカチャカリズム全開の賑やかな音楽ながら品の良さが感じられるのである。なので単なるお祭り騒ぎには終わっていない。(ここで引き合いに出して誠に恐縮だが、同じ店でたぶん同時期に購入した日本人サルサバンドのファースト・アルバムとは、その点で決定的な違いがあると思った。余談ついでながら、その楽団は国内外でそこそこ人気も獲得していたらしいが、私にはリードヴォーカル、コーラス、器楽の全てが凡庸であり、ひたすら仲間内で盛り上がっているとしか思えなかったのである。他ページでも使った言い回しを持ち出すならば、「学芸会レベル」ということになろう。なお、女性歌手は解散後もソロ活動を続けているようで、NHK教育テレビの「スペイン語会話」で歌を披露しているのを何度か見たことがある。が、相変わらず光るところは何一つとして見出せなかった。)
 ところで、この音楽はおそらく日本人(一般人)にも結構知られているはずだ。というのも、2007年1月に納豆ダイエットでの捏造が発覚して急遽打ち切りとなってしまった健康番組(註)のテーマとして使われていたからである。(註:Wikipediaでは「似非科学を生活情報のように取り扱ったバラエティ番組である」と紹介しているが、制作スタッフによるデータ捏造や内容改竄は常態化していたようである。)しかしながら、オープニングでも番組途中での挿入でも流れていたのはイントロだけ。真に素晴らしいところを無視するとは呆れて物も言えなかった。やはりインチキを平気で繰り返すような連中ゆえ、「本物」を聞き分けるだけの耳(音楽センス)なんぞまるで持ち合わせていなかったと思われる。
 2曲目は "Baílame"、言わずと知れたジプシー・キングスの代表曲のカヴァー、というより彼らが共演している("Dueto con Gipsy Kings" と記載)。ところで私は、デビューする前にサンディーノが彼らのバックで歌っていた、あるいはギターを弾いていたので、その感謝の気持ちとして(御祝儀的に)ゲスト参加したと長いこと思い込んでいたのだが、いくら検索してもそのような記述は見当たらなかったので記憶違いかもしれない(やれやれ)。実際に彼女が所属していたのはCarlos Vives(誰?)のバックグループらしい。それはともかく、当盤では(おそらく女性歌手の声域に合わせて)オリジナルよりも高いハ長調が採用されている。ニコラス・レイエスが歌うには決して楽でなかったと想像するが、そして私にとってもただでさえ耳に煩わしい曲がそのために余計そうなってしまっているのだが、若い歌い手の門出を祝うべく一生懸命声を張り上げている彼の心意気には好感が持てる。
 3曲目 "Por última vez" が当盤では最も気に入った。しっとりした感じの独唱、打って変わって元気いっぱいとなるサビの合唱、その対比が絶妙である。続くスローバラードの "Canción de amor" も曲自体は上出来だ。ただし、このような音楽では歌も声も(プロの水準は十分クリアしているのだが)超一流ではないためか、やや聴き劣りがする。むしろ次の(タイトルも曲調も軽快そのものといえる) "Deéjame volar"(メレンゲ)の方が持ち味が出ているようだし、印象も格段に良かった。さすがに6曲目 "Camino del corazón"(同)ともなるとチャカチャカばかりが耳に付いて私は敬遠したいが・・・・
 以降のトラックについては特に述べたいということはない。上質の音楽ばかりを10曲も揃えたアルバム(トータルタイム:41分20秒)が1000円で手に入ったという聴後の満足感は相当なものだったが、今回久しぶりに再生してみても基本的にそれは変わっていない。終曲 "Berience" がやや一本調子とは聞こえたが。85点。

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