ロサーナ(Rosana)
Lunas Rotas
1996
MCA LATINO LATD-11576
かなり前(たぶんパラグアイから戻って復学したその年)に足繁く通っていた名古屋市内の中古屋で買った。そのラテンのコーナーに国内盤(日本語帯付き)と輸入盤が隣り合って置かれていたが、後者には「スリキズ試聴済」の刻印と共に前者の半額ほどの安値(800円だったかなあ?)が付いていたため迷いはなかった。元ネット知人Nさんのサイトで初めて知ったが、このロサーナはカナリア諸島出身である。また本作は1996〜2005年までに5枚のアルバムを発表している歌手のデビュー盤であるが、スペイン国内で100万枚以上を売り上げたということだ。ただし、私は今日に至るまでそれほどにも支持された理由がサッパリ解らないままにいる。
1曲目 "Furia de color" では、ギターとパーカッションによる伴奏に乗せて歌手が気持ちよさそうに歌っている。時に装飾を加える合唱も上品なので当然ながら心地良い。だが、結局それだけである。次の "El talismán" にしても出だしやサビに親しみやすい旋律を使っているから耳当たりが悪かろうはずがない。しかし、私にはパンチというかアクセントがまるで利いていないと思えて仕方がない。これは収録曲全てに共通する特徴である。下宿で初めて再生した時はタイトル曲 "Lunas rotas"(トラック5)の途中で眠気を催してしまったはずだ。HMV通販のバイオグラフィーには "Spanish singer/songwriter" とあるし、ブックレットに作詞作曲者が特に記載されていないことからも、当盤の11トラックは全て自作自演と考えて差し支えないのだろう。メロディメーカーとしての腕は確か。それは認める。だが、いかにも売れそうな音楽ばかりが並んでいるのを耳にすれば、あまりにも大衆へのウケ狙いに走りすぎではないかと文句の一つも言いたくなってくる。あるいは初リリースゆえに敢えて意欲作を外したのかもしれないが・・・・
ロサーナは声がハスキーだけでなく歌い方にも結構クセがある。ゆえにアクのない平易な音楽とのミスマッチが全ての元凶という気もしてきた。個性的な歌唱にもかかわらず心を打たないのだ。それでも潜在能力の高さは窺えるから、2作目以降で冒険を試みるようになっていれば本領を発揮している可能性は十分ある。要は当盤だけで歌手の実力を真に推し量るのは酷であり、無理があるというものである。今やそういう場合(逃げ)の常套手段となった感もあるが、「とりあえず」の70点。
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