フリオ・イグレシアス(Julio Iglesias)
(阿川弘之が「最近は『佐和子の父』として紹介されることがほとんどである」と何かでボヤいてたが、同様にこの歌手についても今や息子Enriqueの方が有名かもしれない。)
パラグアイから帰国後しばらくすると、向こうで録音したコレクション(ポルカなど)のみならず他の西語曲も聴いてみたいと思うようになった。1992年春のことである。とはいえ、当時の私はラテン音楽の事情には全然詳しくなかった。(かつてクラシックの音楽家としてカラヤンの名前だけは知っていたという状況と似たり寄ったりである。まだモセダーデスのことは忘れていた。)唯一名前に聞き覚えのあった歌手がフリオ・イグレシアスだった。そこで名古屋市千種区内のレンタル屋(註)に足を運び、「ライーセス(ルーツ)」を借りて聴いた。(註:最終的に3店に出入りするようになったが、どの店かは思い出せない。)これは西、葡、伊、仏の4ヶ国語による名曲メドレーを集めたCDだが、どのトラックも非常に質の高い音楽作品に仕上がっていたため、ダビングしたテープを連日のように聴いた。お陰でラテン音楽熱が一気に高まった。私がクラシックに目覚める切っ掛けとなったカセットテープ版「音のカタログ」と同様の触媒作用を示したといえるだろう。(逆にあれに出会っていなければ。現在ほどラテン音楽を熱愛することにはならなかった可能性が高い。)そうなるとオリジナル曲も聴いてみたくなり、続いて(やはり店は不明ながら)「ザ・ベリー・ベスト」を借りた。こちらは「まずまず」(約2/3のトラックが気に入った)というレベルに留まったけれども、彼の甘い歌声が我が国のオバチャン達を虜にしているとの話にも十分肯けるものがあった。その後何年か経って新譜の「タンゴ」を買った。が、印象は「イマイチ」であった。
郷里の滋賀に戻って本格的にラテンのCDを集めようという気になった私だが、やがてイグレシアスにも加わってもらうこととなった。端午には懲りたので対象となるジャンルはポップスである。そこで国内外のカタログにて検索。(ネット経由による購入はまだ十分に普及していなかった。)テープで持っている音源との重複は無視することにして、なるべくコストパフォーマンスの良い(価格当たりの収録曲数が多い)品を求めようとした。その点で発売されて間もない39曲入り2枚組の「マイ・ライフ〜グレイテスト・ヒッツ」(ESCA-7355)は文句なしだった。ところが、日本盤のみのボーナス・トラックの「ジェガステ・ア・ミ・ヴィダ〜晴れた空そんな日に」が大ネックとなった。「CDジャーナル・データベース」の紹介文「篠原ともえとのデュエット・ナンバーも入っていたりするのが何ともおチャメ」に恐れをなしてしまったからである。篠原とやらが何者かは知らないが(註)、本職の歌手ではなさそうだからイグレシアスの相手がまともに務まるはずがない。(註:かつてKさんへのメールに篠原涼子と書いてしまっていたのを最近知った。とはいえ今も状況は大して変わっていない。実のところ私は篠原ともえも篠原涼子も米倉涼子も全然区別が付いていないのだ。国仲涼子は「ちゅらさん」で観たから何とか判別できる・・・・はず。)最悪の場合、それまでの38曲を聴いてきた感興が一発でぶち壊しになりかねない。(松田聖子&プラシド・ドミンゴという世紀のミスマッチ共演のことも脳裏にあった。)これでは候補から外さざるを得ない。代わって2曲少ないながらもほぼ同内容の輸入盤 "My Life: The Greatest Hits" に白羽の矢を立てた。が、英語曲がかなり多く混じっているのではないかと考え二の足を踏んでしまった。結局は入荷の見込みが薄いことを承知の上で "Mi Vida: Grandes Éxitos" を生協ショップに取り寄せてもらうことにした。案の定待ち人来たらず。(後で判ったことに米盤と西語圏向け仕様盤の収録曲には1/4強の違いがある。日本盤はどちらかといえば前者に近いものの、後者にのみ収録された "Nathalie" を選んでいるなど、わが国で人気の高い曲を優先して集めているという印象だ。)それで仕方なくという訳でもないが、(英語トラック混入の危険なしと予め判っていたこともあり) "Raíces" (上記「ライーセス」の輸入盤)と「ザ・ベリー・ベスト」の2枚を注文し入手した。ともに(特に前者が)愛聴盤となっているのは言うまでもない。また、ネット通販を利用するようになってからであるが、アマゾンからラテンアメリカの定番を集めた "América" を購入した。これはやや期待外れだった。
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