一昨年、この項に挙げたブラームスの交響曲第1番ですが、これまでに購入したディスクは17種類に上ります。自分の好み(独断)でランク付けしてみました。(短いコメントも付けます。)
1.ジュリーニ&ロス・フィル
遅いけれども引き締まった演奏である。(ティンパニが弛緩を食い止めている。この壮絶な打撃音は実に爽快である。)全曲を通して指揮者の深い「祈り」のようなものを感じる。一種の宗教音楽にまで昇華されている。
2.ヴァント&北ドイツ放送響(82年盤)
「ブラームスは重厚」というイメージが粉砕される。演奏時間は概して短めだが、速いとは感じない。それだけ密度が高いということ。老成前のヴァントの持ち味である「鮮明さ」が見事に発揮されていると思う。
3.カラヤン&ベルリン・フィル(87年盤)
一貫して「響き」にこだわってきたカラヤンが、ここにようやく究極の「響き」を実現した。この演奏を認めない評論家は何らかの意味で偏向していると言えよう(と決めつける自分も偏向している?)
4.チェリビダッケ&シュツットガルト放送響
とにかく丹念に、丁寧に細部まで音楽を作り上げているという印象。チェリの唸り声が時々入ってくるが決して邪魔にならず、却って引き込まれてしまう。
5.ミュンシュ&パリ管
録音のせいで響きが濁っているが、それが逆に幸いして不気味で迫力満点の演奏となっている。同時期に録音された「幻想交響曲」を思わせるような狂乱状態にしばしば陥る。特にティンパニの気合いの入り方は尋常ではない。(本来、楽譜にない箇所でも叩いている。)
6.ベーム&ベルリン・フィル
カラヤンが振る時とは違うBPOの音(重々しさより美しさが前面に出る)が聴ける。推進力が素晴らしい。
7.ヴァント&北ドイツ放送響(96年盤)
82年盤と比べて余裕が感じられるところはいいが、録音のせいで鮮明さが犠牲になっているのが惜しい。終楽章のティンパニの「乱心」はご愛敬か?
8.バーンスタイン&ウィーン・フィル
所々でマーラーのような音がする。(特に弦合奏。イスラエル・フィルとだったらなお良かった?)ブラームスがそっちのけになっている感もあるが、バーンスタインのファンにとってはこたえられないであろう。
9.ベーム&ウィーン・フィル
トータル的に判断すれば、最もスタンダードな(万人向けの)演奏と言って良いのではなかろうか?
10.ジュリーニ&ウィーン・フィル
今の自分には緩んでいると感じられ、ちょっと受け付けられないが、齢を重ねるにつれて好きになるかもしれない。
11.チェリビダッケ&ミュンヘン・フィル
許容範囲を超えた、まさに地獄のような遅さ。ただし、終楽章後半のティンパニのすさまじい炸裂は地獄のクライマックスとでも呼びたくなる聞き物。仕上がりはシュツットガルト盤より雑に思える。
12.セル&クリーヴランド管
ヴァントの82年盤に匹敵する演奏かもしれないとも思うが、拙い録音のせいで大いに損をしている。室内楽のようなチャチな響きだし、不鮮明さが目立って仕方がない。
13.チェリビダッケ&ミラノRAI放送響
モノーラルと区別が付かないような酷い録音である。が、仰天するような仕掛けが所々に散りばめられており、ワクワクさせられる。
14.ワルター&コロンビア響
セル盤と同じく箱庭録音で損をしている。(4番では成功したが、)スケールの大きいこの曲では魅力半減である。暖かさを最も感じる演奏なのであるが。
15.アバド&ベルリン・フィル
ヴァント盤とは対照的に、単に速いだけで中身がないと思ってしまった。ダイナミック・レンジがやたらと大きく、家ではうるさくて聴いていられない。
16.ケンペ&ミュンヘン・フィル
やはり「速いだけ」と思えてしまう。CD初期のマスタリング技術の低さによる貧相な音が災いしているかもしれない。
17.バルビローリ&ウィーン・フィル
全曲を均等に引き延ばしただけと感じた。とにかく退屈で死にそうな遅さ。許して!
2004年4月追記
その後購入したのはフルトヴェングラー3種(北西ドイツ放送響、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル)、ケーゲル2種(ともにライプツィヒ放送響)、ザンデルリンク2種(シュターツカペレ・ドレスデン、ベルリン響)、アーベントロート2種(ライプツィヒ放送響、バイエルン国立管)、トスカニーニ(NBC響)、ケルテス(ウィーン・フィル)の11種類である。ただし気に入らないものは処分したので、いま手元に残っているのは22種類である。
2005年9月追記
上のフルトヴェングラー3種のうち、BPO盤とVPO盤はともに52年の演奏である。その後、53年BPO盤および終楽章のみ残されたBPOとの45年の録音が加わったので、現在は23.25種類所有(断片を1/4としてカウント)ということになる。どうも新しい録音には手が伸びない。
戻る