クアルテート・エン・シー(Quarteto em Cy)

Brasil em Cy(ブラジル・エン・シー)
1996
Bomba Records(Companhia Industria de Discos) BOM580(CD00220/2)

 「クアルテート」とあるからには当然4人組なのだが、全員がCyで始まる名前を持つバイーア出身の4人姉妹(Cybele、Cylene、CynaraおよびCyva)ゆえ、ヴィニシウス・ジ・モライス(マリア・クレウザなど他のブラジル人歌手との共演も多い大物)によって命名された。(ところが、ブックレット表紙裏に記載されているメンバー名は順に「シーヴァ、シベーリ、シナーラ、ソーニア」なので怪訝に思い調べてみたところ、後にCyleneが結婚して抜け、代わって加わったのがSonyaであると判明。統一感が損なわれたのは何としても惜しい。→Wikipediaによると、Cyleneの脱退直後に入ったReginaは、語呂合わせのためアルバム表記ではcyを冠せられ「シレジーナ」にされてしまっていたらしい。この荒技には「そこまでするかー」と言いたい気分だが、ならば "Cysonya" だって十分アリではなかろうか?)ここから少し脱線。
 とくに「表記について」のページでは言及しなかったが、私はABC(ただしアルファベットの英語読みの出だし)については「エー・ビー・シー」と綴ることにしている。「エー・ビー・スィー」の方が発音に忠実であるのはもちろん知っているけれども。Seattle Seahawks(NFL)も今更「スィアトル・スィーホークス」などと記すつもりはない。何となくながら「スィ」は見た目がクドいからである。(Z音も同様で、元日本代表監督のZICOを一部メディアが「ズィーコ」と表記しているのを見ると気持ち悪くなる。)ただし、それも時と場合による。"I see."(なるほど)が「アイ・シー」だと違和感ありまくりだ(加えて小早川瀬那を思い出してしまう)し、"Sit down, please" は絶対に「スィット・ダウン・プリーズ」でなければダメだ。(下手したらエラいことになるぞ。)コラムニストのケビン・クローン(ただし本名は越智啓斗、またの名を鈴木権三郎)がテレビ出演時に槍玉に挙げていた「シティー・バンク」(ウンコまみれの銀行)も同類だが、もはや今となってはどうしようもないわな。それはさておき、この音楽集団のカナ表記についても既に定着している「クアルテート・エン・シー」を尊重することにした。それが言いたかっただけである。(本音としては最初の単語を「クァルテート」としたいのだが・・・・)
 既に触れた小野リサ選定によるベスト盤で私は初めて耳にした(第1集には4曲、第2集には5曲が採用)。また彼女の「アミーゴス」にもゲスト参加している。それらの全てで見事なコーラスを堪能できたため、ブラジル音楽を集めようと思い立った時には真っ先に購入対象とした。当盤を名古屋の輸入盤店で買ったのは確かだが、置いていたCD数種の中からこれを最終的に選んだ理由はハッキリしない。(ちなみにボンバ・レコードは当盤以前のオリジナル・アルバム6種についても直輸入盤を扱っていた。)が、たぶん(貧乏性ゆえ)収録曲数と時間を比較した上でのことだろう。グループ名をタイトルに採用したデビュー盤(1964)はそれで外されたに違いない。(蛇足ではあるが、そちらは11曲収録で32分足らずなのに対し、当盤は14曲入りでトータルタイムも44分台である。)今では安価なベスト盤も複数出回っているようだから、特にこだわりがなければそれらを求められても良いだろう。ところで今になって気が付いたが、1996年発表の当盤はこの団体のアルバムとしてはかなり新しい部類に属する。なので初期作品もチェックしてみようかと考えているところだ。
 竹村淳が「ラテン音楽パラダイス」にて「ブラジル音楽最高のボーカル・グループ」と紹介していたが、その言葉に偽りはなく、極めて精緻なる声楽アンサンブルを聴かせてくれる。ユニゾン部の揃いが凄い。重唱も不協和音が全く生じないためハーモニーが美しく響くことこの上なし。4人の声が比較的均質であることも貢献していると思われる。どうやら各人がソロ歌手としても通用するほどの実力派のようだ。大編成のオーケストラにもかかわらず蟻の這い出る隙もないほどの合奏力を誇り、室内楽的とも称せられた(それゆえの批判も出たが)ジョージ・セル&クリーヴランド管弦楽団にも喩えられよう。また、既に当サイトで採り上げたガル・コスタやマリア・ベターニアをはじめ、他ミュージシャンとの共演(計6トラック)での掛け合いも何ともいえず楽しい。ということで減点対象は皆無。ただし、これといって上乗せしたくなることもないため90点とする。なお、この団体のアルバムにおそらくハズレはないだろうから、中古屋でいい値段で売られているのを発見されたら迷わずレジに持っていくことをお薦めしておく。

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