1974-1979ベスト・セレクション
1984
CROWN(PANAM) 035-CDC-2001

 ブックレット真ん中の "IRUKA DISCOGRAPHY" に掲載されている最も古いアルバムは「イルカのうた」(1974年2月発売)であり、以後「イルカの世界」(80年3月)→「夢の人」(80年11月)という順に発売されている。そうなると紹介ページに書いた「夢の人」が2ndであるという記述とは辻褄が合わない。ここでイルカ(本名:神部(保坂)としえ)のデビュー当時のことは何も知らないに等しいと気が付いたため、オフィシャルサイトやファンサイトを当たってみたところ、彼女がソロデビューする前に「シュリークス」というグループに参加し、そこでデュエットとして発表したのが「イルカのうた」であると判った。(その3年前には「ふるさと」というアルバムが出ていたようだが、こちらはなぜか「まぼろしのアルバム」扱いされている。)そのジャケットに一緒に写っているのが後に結婚することになる「カメ吉君」こと神部和夫(シュリークスのリーダー)という訳である。
 さて、当盤には「イルカ」名義でリリースされたシングルおよびアルバムから12曲がピックアップされているが、トラック1「あの頃のぼくは」は1stシングル(74年10月)のA面曲である。(曲順は基本的に時系列に従っている。)出だしは悪くないが、サビに入ると途端に音程の不安定さが耳に付き始める。今なら(容姿優先のアイドルを別として)プロデビューは難しかろうと思わずにいられないほどの危なっかしい歌唱ゆえ、時代を感じると共に苦笑を禁じ得なかった。ところで、この曲のタイトルに使われている一人称代名詞「ぼく」であるが、それが歌詞中に登場する曲が冒頭から3つ続く。2曲措いて再び3曲連続。他に二人称として「おまえ」を用いるもの、父親が息子に語りかけるものもある。(明らかに女性が主人公と判るのは2曲のみである。)つまり、この頃のイルカは男性の側に立って歌うことが圧倒的に多かったのである。そういえば、ネットのどこかで「イルカといえば、いつもオーバーオールを着てギターをボロンポロンと弾いていたボーイッシュなシンガーというイメージがある」という書き込みを見た記憶がある。(ついでながら「aikoはイルカの若い頃と似ている」というのも目にしたが、私はそのアイコとやらを知らないので何ともいえない。)それが次の「ベスト・セレクション」(1979-1983)ではガラッと変わってしまうのだから面白い。
 ところで、当盤を聴く前から耳に馴染んでいたのは3曲目「なごり雪」、6曲目「雨の物語」、9曲目「鳥の記憶」、10曲目「サラダの国から来た娘」、そして最後の「いつか冷たい雨が」あたりである。(テープに録音しなくともNHK-FM「ひるの歌謡曲」で少なくとも1度は聴いていたはず。)最大のヒット作「なごり雪」(50万枚以上)を筆頭に代表曲が何曲も収められていることは認める。だが、私にはもう一つ印象が薄い。何といってもリアルタイムで聴いていないのが大きい。「なごり雪」は他ページで触れるとして、出来が良いと思ったのは「雨の物語」と「鳥の記憶」ぐらいだろうか?(これらは歌唱も比較的安定している。)10曲目「サラダの国から来た娘」は中学時代に同級生がサビの部分をよく歌っていたが、当時からちっともいいとは思えなかった。次の西岡たかし作曲「仔犬のシロ」もベスト盤に収録されることがあるから、名作として位置づけられているかもしれない。しかしながら、歌うというよりは詞を朗読しているように聞こえてしまうため私は買えない。「それがフォークソングというもんだ」と言われたらそれまでであるが。以前は結構好きだった「いつか冷たい雨が」にしても、いつ頃からか押しつけがましさを感じてしまうようになったので(メッセージ性強すぎ?)、進んで聴こうという気にはならない。
 曲の出来不出来についてはかなり主観(好き嫌い)が混じっていると思われるから、とりあえず歌がヘタな分だけを基準点から引いて60点としておこう。

イルカのページに戻る