Recuerdos
1998
BMG 74321-56094-2

 "Serie Platino" よりも10曲収録が多いため、「最初期」( "Eres tú" でメジャーになる前)に発表された1st〜3rdアルバム収録曲のうち当セットで初めて聴くことができた曲が複数あった。ただし、それらに初々しさは感じられても技術的に不満を覚えない訳にはいかない。「新世界」交響曲(ドヴォルザーク)第2楽章の編曲 "Más allá" (DISC1トラック8)など正直「合唱同好会」のレベルである。それはまだマシな方で、 "Esta noche ha llovido" (同トラック6)はサビのコーラスが何とも汚い。現代曲かと紛うほどの不協和音攻撃に苦痛を感じてしまった。また、デビューアルバムの冒頭に収められた "Pange lingua" は男性が交替でソロを受け持っているが、音程が怪しいのが何人もいる。こんな体たらくでよくもまあ国境を越えた人気グループの地位にまで到達できたなあ、と感心するほどだ。
 一方、「前期」および「中期」で初めて耳にした曲には優れたものが多かった。4thアルバム収録の "Himno" (DISC2トラック14)では以前と聞き違うほど見事なハーモニーが聞ける。同じくトラック2の合唱曲 "Me siento seguro" は、通算11枚目のアルバム収録曲ゆえ熟練の技とでもいうべき精度の高さに舌を巻いてしまう。爽やかさ全開のメロディも大変魅力的で、コレクションから絶対に外すことができない傑作である。(サビの "pasará, las mañanas pasará" というフレーズのため1曲目の "¿Qué pasará mañana?" と混同してしまうのが玉に瑕だが。)次の "Sólo era un niño" も "El color de tu mirada" と並ぶバラードの名曲だと思う。キリがないのでこれ位にする。
 ということで「玉石混合」という形容の似合う当2枚組だが、"Serie Platino" と同じ曲が半分以上(17曲)を占めるということもあって、当然ながら「玉」の方が多い。惜しむらくは2枚ともトータルタイムが50分代前半だったこと。ケチケチしないで20曲ずつ(あるいはそれ以上)入れてもらいたかった。よって少々甘めの75点。長時間収録のセットものが出た場合に買い換えるかどうかは未定である。

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