20 de Colección
1993
Sony LATIN CDL-81123/2-461504

 既に述べたようにトラック1は "Eres Tú" の新録(コンサート収録)である。このベスト盤では他にも "15 Años de Música" (LP発売は1984年)収録と思しきライヴ音源が複数再利用されている(トラック3〜5および11)。ところが、 "Tómame, déjame" を除いて出来はあまり良くない。(この曲については、かつて歌いにくそうにしていたのがウソのように見事な歌唱を聞かせている。わざとらしさがなくなったのも良い。10年経ってようやく自家薬籠中の物としたという感じだ。)"Como una sonrisa, eres tú, eres tú〜"の最後の「ラララソレミ〜」の「ラ」からして辛そうである。アマヤ・ウランガにとって若い頃の持ち歌を原調のままで歌うことが負担になっているのは明らかだ。またトラック2、13、14、16、17は男性ソロあるいはコーラス主体の曲だが、正直なところ私は魅力を全く感じない。よって、当盤は再生前に不要曲のスプライシングを行う(聴きたい曲だけプログラミングする)のを常としていた。
 ところが、それら以外にはなかなかに魅力的な曲が揃っている。まずA・ウランガ独唱曲ではプラシド・ドミンゴをゲストに迎えた "Maitechu mía" から "La música"、"Has perdido tu tren" の三連発(トラック7〜9)が傑作揃い。そして終盤(トラック18&19)の "Así fue nuestro amor" と "Amor de hombre" の完成度も非常に高い。特に後者は曲の由来(Intermedio de "La leyenda del beso")がよくわからんが、A・ウランガの情熱的な歌い回しに凄味すら感じる名曲である。(また前者も "Annie's song" という英語曲のカヴァーらしい。聴いたことないが。)一方、アナ・ベヘラーノ独唱の "Las palabras" (トラック6)と "Un día de domingo"(同12)、およびデュエットの "Colores" のいずれも素晴らしい。特に "Un día〜" は ベヘラーノの気怠い歌い方がハマりにハマっている。ふと許光俊が「生きていくためのクラシック」のウィリアム・クリスティの項を「暑い夏の午後など、適度に冷房の効いた部屋でクリスティのシャルパンティエを『ああ、きれいだなあ』と聴きながら、ついうとうとする。それ以上に快いこともなかなかあるまい、と言ったら無礼であろうか。」と結んでいたのを思い出した。私はクーラーを好まない人間なので(そういえば鈴木淳史も同様だったはず)、「暑い夏の午後など、適度に冷えたビールを飲んで・・・・」になるだろうか?(ビールを普段あまり飲まない私が書いても説得力は全然ないが。)そういうシチュエーションにピッタリなのはボサノヴァだと思ってきたが、この曲も休日ウトウトしながら聴くには最高である。そして圧巻はトリを務める "Tienes un amigo" である。モセダーデス全ての曲の中で私はベスト3に、あるいは "Eres tú" に続く第2位に挙げたいほど大好きである。実は原曲の "You've got a friend" はおろか作詞作曲者のCarole Kingすら知らなかった。そこで "Tapestry"(国内盤「つづれおり」)を買って聴き比べたが、オリジナルもこのカヴァーもそれぞれに良さがあり、どっちを聴いても元気が出る。続けて再生したくなることもある。(歌はベヘラーノの方が上手いが。ちなみに元の詞をかなり忠実に訳している。)何にしても、これだけの歌い手をどうしてもっと前面そして全面に出そうとしなかったのか? 惜しまれてならない。後に買った2枚組の "Antología" と多くの曲が被っているものの、そちらにはベヘラーノ独唱の3曲が入っていないため、当盤は絶対に手放せない。
 最後にトラック15 "Necesitando tu amor" について。(これも "Just when I need you the most" のカヴァーらしい。私は器楽演奏版をスーパーマーケットの店内で聴いたことがある。)誰が歌ってるのか判らない。A・ウランガでもベヘラーノでもない。もう1人の女性メンバー、Izaskum Uranga なのか、それともゲストなのか? どっちにしてもヘッタクソである。こういうのをベストアルバムに採用する制作者の見識を私は疑う。
 ということで、DNA状態での評価は65点だが、イントロン切り捨て後は90点となる。

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