ミリー(Millie)

Sola
1995
EMI Latin/Capitol Records H2 7243 8 28861 2 9

 HMV通販では "Millie (Latin)" として扱っている。(同名の歌手が他にもいるためである。)ただしバイオグラフィーは見当たらない。各言語のWikipediaで捜しても同様である。困った。ところが、後に知ったことに「犬」サイトは先述した別歌手の方に彼女の経歴ページを載せていたのである。全く以てケシカラン話だが、それによれば1995年リリースの当盤によってデビューしたプエルト・リコ出身(born Milagros Ninette Corretjer Maldonado)のポップシンガーと判明した。なお私は件のB社から買った。「歌がうまい」「声がキレイ」といった類の推薦文が威力を発揮したためである。
 このミリーについての情報はとにかく少ないのだが、ある一般人のサイト(メキシコ関係)の「イチ押しメキシコのポピュラー音楽」コーナーにて(タリーアなどと一緒に)採り上げられていた。そのページから少し引かせてもらう。

 あまり有名ではありません。
 しかし、かなりお気に入りなのです。
 まず、アイドルのようで歌唱力抜群。声質も好みです。
 また、いい曲に恵まれています。

ここまで全く同感である。また、少し後に「ところが・・・あまり売れてないんですよ。なぜか。メキシコ人の目は節穴か!!」ともある。(それゆえに執筆者は他国の歌手ながら紹介したくなったらしい。)それも事実だとしたら激しく同意したくなる。
 1曲目 "Por primera vez" を初めて聴いた時点で「当たり」を確信した。曲もアレンジも良い。前者は導入部もサビも美しいメロディ、接続もスムーズ。後者もドラムスや電気楽器の使用が控え目で品がある。隙がない。だが、それ以上に感心したのが歌手だ。やや硬質の美声。アッサリにも感情過多にもならず、シットリしたメロディを伸びやかに歌い上げているのが素晴らしい。技術的にも申し分なし。わが国のアイドル歌手もこれくらい歌唱力があれば酷評しないし、年に1回ぐらいなら聴いてやろうかという気にもなるのだが・・・・それはさておき、ミリーの歌からは並々ならぬ格調高さも伝わってくるから、このまま順調に伸びていけばグロリア・エステファンの域にまで到達できるような逸材ではないかと思わせる。嬉しいのはこの曲のようなパラード調のトラックの比率が高いこと。(余談だが、次の "Con los brazos abiertos" では1フレーズ歌い終わった直後の「オオオオオー」でアナ・ガブリエルの "Amor con desamor" を思い出してしまった。音型が一緒だったからである。作ったのは全くの別人28号だが・・・・)アップテンポによるタイトル曲 "Sola"(トラック3)と "Entre cuatro paredes"(同8)にしてもチャカチャカは耳障りと感じるほどではなかった。ちなみに前者と6曲目 "Y yo sin tí"(原題 "Quelli come noi")がイタリア語、4曲目 "Solo tú"(同 "Only you")と9曲目 "Dónde te has ido amor"(同 "Where did the feeling go")が英語曲の西語によるカヴァーである。いずれも秀逸。ただし、前に紹介したパンドラのベスト盤のように他のトラックが聴き劣りするようなことはない。10曲(計42分強)全てが上出来。オリジナルアルバムには極めて稀なことではないだろうか。中でも力強い歌を聴いている内に自然と元気が出てくるラストの "De seda pura" が一番のお気に入りである。
 ということで、当初は90点を基準に考えていたのだが、とてもそれどころではないと思うようになった。7曲目 "Estaremos juntos" の共演者、Alvaro Torresの時にナヨナヨ気味とも感じる歌い方が私好みではない(女性歌手と同等以上の実力を備えていることは窺えるのだが)という理由で95点から2点引いておく。おやおや、デビュー盤における当サイト史上最高点を更新してしまったじゃあーりませんか。ならば早かれ遅かれ、と思われるかもしれないが、実は後に名古屋の中古屋で2ndアルバムの "Emociones"(1997)を発見し、即座に手に取るまでは良かったものの、いざ再生してみれば騒々しいと感じるトラックが結構多かったため、間もなく人に譲ってしまったのである。今持っていたとしても80点に届いたかどうか? もしミリーが当盤級の高水準アルバムを連発していたのであれば、それだけの才能を無視していたらしき中南米人を躊躇なく盆暗扱いするところであったが、そういう事情のため保留とさせてもらう。

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