ルセーロ(Lucero)

Sólo Pienso en Tí"
1997(初発は1991らしい)
Universal Music UMD-40043

 何かで(たぶんCDジャーナルの新譜紹介にて)「ルセーロ姫が」というレビューを目にした記憶があるから、あるいは国内盤も出ていたのかもしれない。(調べても見つからなかったけど。)この人もタリーアと同じく女優との兼業であり、es.wikipedia.orgによると13歳時に1stアルバムの "Te prometo" を発表し、テレノベラにも初出演している。当盤はオリジナル・アルバムとしては第8作にあたり、50万枚を売り上げたということだ。ちなみに、この前後数作はコンスタントに数十万枚を売っている。大変な人気歌手だったという訳である。(今世紀に入ってやや下火となったようだが。)名古屋の中古屋で何気なく買ったが、髪を振り乱している歌手の形相は結構怖い。黒の革ジャン着用のため暴走族のようにも見える。(髪をかき上げている右手にヨーヨーを持たせたくもなる。)さぞかし激しい音楽を繰り広げているのだろう。そう思って試聴に臨んだ私だが見事はぐらかされた。ただし、いい意味で。
 1曲目 "Ya no" は予想していた通りリズムの強烈なロック調の音楽だが、決して勢い任せにならず丁寧に歌っているところに好感が持てる。透明感のある美声だ。ただし、このような曲調には線が細すぎると思えなくもない。次の穏やかな "Quién pudiera quererte" では印象がずっと良くなる。トラック4 "Necesito tu amor" は長調の導入部と短調のサビの対比が絶妙なる名曲だが、ルセーロもそれに熱唱で応えており当盤中随一の出来映えといえる。惜しむらくは同レベルに達しているトラックが少ないこと。先の "Ya no" のように重厚、逆に5曲目 "Electricidad" のように軽快すぎると歌手の持ち味が出ない。またラスト(トラック10)の "Sólo pienso en tí" も構成があまりに単純。結局盛り上がらないままにフェードアウトで終わってしまうため非常に不満が残った。
 ということで、ルセーロは人気女優という経歴から危惧されたような「歌はからっきし」では決してなかったが、当盤ではその可憐な歌声が魅力を発揮する機会が十分には与えられなかったようである。同情点(?)として5点上乗せして75点。

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