América
1989(初出は1979)
CBS CD-82846

 既に述べたように中南米の名曲集である。だたし70年代のアルバムからピックアップしているため、「ザ・ベリー・ベスト」のページでも言及した自信なさげな歌唱が私としては引っかかる。(サッカー選手になるという夢を諦めなければならなかったことが暗い影を落としている訳ではもちろんないだろうが。)また、超名曲 "Guantanamera" を後年の "Hey" と同じく爽やかに歌い上げているが、「そういう曲じゃないだろう」と言いたくなる。
 当盤に "Recuerdos de Ypacarai"(ウパカライの思い出)が入っていると知ったから買った。(なお iTunesの曲目表示は "Ypacaraí" となっている。最後から2番目という原則から外れたアクセントゆえ、西語表記としては正しい。しかしながら、グアラニ語の強勢位置は基本的に最後の音節だから本来は要らないのだ。だからちょっと気に入らない。)ところが、その目当ての曲もいま一つ。1番しかないから仕方ないと言ってしまえばそれまでだが、ご丁寧にも同じ詞を2度繰り返し歌っている。これでは聴く側は退屈するだけだ。(生で聴くなら話は別である。)それを防ぐため、パラグアイのミュージシャンの多くが行っているようにサビのみのリフレインに留める、あるいはリッサ・ボガードに指導してもらってグアラニ語で歌うべきだった。また、歌詞の最後のフレーズが "Todo te recuerda, mi amor te llama, kuñataî" なのも気になる。こんなの初めて聴いたぞ。(それまで私が知っていたパラグアイ人による歌唱では、ことごとく "Vuelve para siempre, mi amor te espera, kuñataî" となっていた。輸出の際に改竄されてしまったのだろうか?)その直前が "Todo te recuerda, mi dulce amor...." だから、重複部分による冗長感が耳に残ってしまう。さらにダメ出し(ダメ押し)しておくと、ラストの "kuñataî" の音型は「ソララ(高い方の)ドー」だ。勝手に「レファミド」に変えるんじゃない!
 ということで、既に同種のアルバムをお持ちの方がコレクションに加えるほどの価値はない。基準点から上の落胆分を引いて65点。

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