グラシエラ・ベルトラン(Graciela Beltrán)

Tuya
1997
EMI Latin H2 7243 8 35172 2 0

 名古屋の中古屋で買った。たぶん800円か1000円だったと思う。
 ネットで検索したらバイオグラフィーに "Born: in Costa Rica, Sinaloa, Mexico" とあったので当初は「どっちなんや?」と混乱してしまった。判ってみれば「コスタ・リカ」はシナロア州の小都市である。(全く紛らわしいが、中米に位置する同名の他国ではなかった。)つまり歌手は生まれも育ちもメキシコである。既に10枚を優に上回るアルバムを発表し、現役続行中のようである。 "Revelación Ranchero" でのデビューは1989年だが、以降しばらくはリリースの間隔が空いている(次作は1995?)から当盤も比較的初期の作品と位置づけても良さそうである。(なお、あちこち探し回ってみたものの歌手の生年を記載しているページは発見できなかった。もしかして伏せているのだろうか?)ところで、ブックレット表紙の歌手は闘牛士を彷彿させるような出で立ちでソンブレロ(山高帽)も被っている。まるでメキシコ伝統音楽の継承者のごとく。しかしながら、他盤ジャケットの多くは現代風(ビキニスタイルもある)で当盤とは全く異なっていた。そうなると、当盤あるいは1stアルバムのように民謡調の曲(ランチェーラなど)を手がけるのはあくまで副業であり、普段はポップスを歌っていると考えるべきかもしれない。(未確認だが。)
 トラック1の "Adiós amor" でいきなり心をつかまれた。あたかも昭和40年代の歌謡曲のようなメロディに乗せて何とも愛らしい歌唱を繰り広げている。ふとデビュー後間もなくの森昌子を思い浮かべてしまった。(別に彼女のファンという訳ではないのだが。また同じ「別れの曲」ということもあってか、漂ってくる雰囲気はどことなく「瀬戸の花嫁」に近いのだが。)これとラス前(トラック9)の "Por eso amor" は曲調、構成ともによく似ており(対になっているのか否かは知らないが)当盤では二大名曲といえる。また他のトラックもあどけなさが残る歌い方(註)と古風な音楽、そしてアコースティック楽器主体(ギター、トランペット、弦楽など)による伴奏との相性が非常に良い。(註:ただし決して下手ではない。時にサビで大仰な節回しが聞かれるけれども演歌調の音楽だから許されると思う。)35分があっという間に過ぎてしまった。加えて大音量時にビリ付き気味になるのも惜しい。これら短時間収録と音質上の難点のみが「常識音楽」における最高点からの減点対象となる。88点。なお、トラック7 "Eres tú" は例の超名曲ではない(またLuzの同名曲とも違う)ので注意されたし。

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